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ゲノム情報の争奪戦、米国から大きく遅れる日本はどうする?

 手術や放射線療法では対処できないがんの治療として期待されるゲノム(全遺伝情報)医療。患者の遺伝子を調べるパネル検査が6月にも保険適用となる見込みで、利用が広がりそうだ。ただ日本にとっての大きな課題は情報の争奪戦。

 パネル検査装置で先行するのは米国メーカーだ。病院で採取した患者の検体を米国に送り、日本には結果リポートのみが帰ってくる仕組み。今後の新薬開発に欠かせない詳細なゲノム情報や、検体そのものは米国が持つことになる。

 これに対し日本では国立がん研究センターとシスメックスが共同で検査装置を開発。米国製と並んで薬事承認を取得した。こちらはゲノム解析も検体保管も日本国内だ。

 所管の厚生労働省は情報の国内蓄積に向けて知恵を巡らす。がんセンターに「がんゲノム情報管理センター」を設置。パネル検査に公的医療保険を適用する時は、このセンターへのデータ提出を要件とする。つまり日本人のゲノム情報を米国で解析した場合でもコピー提出を義務付ける。

 重篤ながんの患者の闘病と医師の苦戦の陰で、情報の争奪戦が加速している。他分野だって似たようなことが起きているに違いない。産業界も安閑としていられないなと再認識した。
日刊工業新聞2019年5月31日

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