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デジタル時代になぜ人気?“活版印刷の聖地”を楽しむ

印刷体験で学ぶ歴史と技術
デジタル時代になぜ人気?“活版印刷の聖地”を楽しむ

工房「印刷の家」では活版印刷を体験できる

 印刷博物館は、印刷技術の歴史や特徴を体感できる博物館だ。入り口をくぐると、人類最古の絵画・ラスコー洞窟の壁画やハンムラビ法典、その他数多くの歴史資料や美術品のレプリカが並ぶ回廊が待っている。常設展示を見る前に、凸版印刷が印刷技術の神髄に位置付ける「コミュニケーション・メディア」の役割を来館者に感覚的につかんでもらうための仕掛けだ。

 印刷技術の価値は、今や紙に絵や文字を写し出すことにとどまらない。とはいえ、歴史資料のレプリカと一緒にクレジットカードやCD、半導体の基板が並ぶ回廊に不思議そうな顔をする来館者も多いという。「技術の変化や進歩について学ぶため、新入社員研修の一環で印刷会社や新聞社、出版社などの社員も多く訪れる」と宇田川龍馬学芸員は語る。

 2000年に開館した印刷博物館には、毎年3万―4万人が訪れる。活版印刷のワークショップや期間限定の企画展を開催すると、世代を問わず多くの人が足を運ぶという。最近は“活字ブーム”を背景に、20―30代の女性の来館者数が増えている。「(活版印刷を題材にしたほしおさなえ氏の小説)『活版印刷三日月堂』シリーズの愛読者からは“活版印刷の聖地”と言われているようだ」(宇田川学芸員)。

 常設展示の見どころの一つは、重要文化財(重文)の「駿河版銅活字」。徳川家康の命で作られた日本最古の活字版で、当時の資料と一緒に展示している。1文字だけ上下が逆さになった誤植のページが活字の使用を物語る。重文を収蔵している産業博物館は国内でも珍しいという。

 展示フロア内にあるガラス張りの工房「印刷の家」では、工房内の見学や簡単な活版印刷体験ができる。宇田川学芸員は「自分で生み出す体験で、文字通り知識を身につけてほしい」と語る。印刷機械に囲まれた空間で一筆箋(いっぴつせん)やコースターに活版印刷を施す作業は、デジタル化が進む現代ではかえって新鮮かもしれない。
常設展示では200―300点を展示

【メモ】▽開館時間=10―18時(入場は17時30分まで、月曜日は休館)▽入場料=一般300円、学生200円、中高生100円、小学生以下は無料▽最寄り駅=東京メトロ有楽町線江戸川橋駅、JR総武線飯田橋駅など▽住所・電話番号=東京都文京区水道1の3の3、03・5840・2300
日刊工業新聞2019年5月31日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
凸版印刷が手がける事業はいずれもコミュニケーションがキーワード。事業の幅は広いですが、いずれも印刷の役割から派生・進化しています。文中では紹介しきれませんでしたが、世界最小の印刷本「マイクロブック」も印刷博物館の目玉の展示。ルーペをかざすと実物を見ることができるのですが、見つけるまでに時間がかかりました。

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