自前主義から脱却!? 重工大手が新興企業と協業模索

AIやエネで新技術導入

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IHIグループ横浜ラボには試作室もあり、着想を直ちに形にできる
 国内の重工大手各社が、スタートアップ企業やベンチャー企業との提携を模索している。IHIは横浜市磯子区の「IHIグループ横浜ラボ」で、スタートアップや大学、デザイナーなどと交流を進める。三菱重工業はベンチャー企業のアイデアを実現するインフラとして「MHIテストベッドハブ(仮称)」を近い将来、設置する計画だ。川崎重工業は東京・丸の内のコワーキングスペースにテナントとして入居、スタートアップ企業などと面談を加速している。(文=編集委員・嶋田歩)

 「これまではせっかくお客さまに来ていただいても、数時間後には戻らなくてはならないので日程のロスが大きかった。グループラボはそうした制約がなく、気の済むまで徹底議論ができる」。村上晃一IHI取締役常務執行役員は強調する。

着想を早く形に


 グループラボは開発構想を議論する共創エリア、着想品を試作するガレージ、事業化を検証するプロジェクトブースの3段階構成で宿泊施設もある。「顧客との面談で『本日中に開発しよう』となっても対応ができる。米シリコンバレーや中国・深圳市のベンチャーとの交流で、最終的にものをいうのは人と人だと痛感した」と村上取締役は回想する。

 人工知能(AI)や画像処理装置、IoT(モノのインターネット)などの新しい概念が次々と加わり、製品開発にも幅広い知見や専門技術が求められるようになった。

 IHIに限らず、重工メーカーはこれまで製品からビジネスモデルまでほとんどを自前主義で手がけてきたが、新技術がそうした従来手法を変えつつある。ライバルメーカーに開発で先を越されないためにも、スタートアップや新興企業と積極交流し、ごく短期間で製品開発することが必要になっている。

“対等な関係”に


 川崎重工業は17年4月に発足した「イノベーション部」の拠点を、2018年夏に東京・丸の内のWeWorkオフィス内に移転した。浜松町の東京本社だとどうしても相手から見て敷居が高く、なかなか協業の距離が縮まらなかった。あえて別会社のビルに入居することでスタートアップと“対等な関係”になり、心理的な距離が縮まったという。

 19年度からの中期経営計画「中計2019」ではグループ外からのイノベーション取り込みの具体的分野として、AIを利用した将来輸送システムや自律型ロボット、水素や再生可能エネルギーによる将来エネルギーシステムなどを例示している。

モノづくり重視


 三菱重工業も社外パートナーとの共創の場を模索する。MHIテストベッドハブで共創空間オフィスや試作・試験設備、ユーティリティー設備を設けて、ベンチャーのアイデアを実現するためのインフラを提供する計画。ベンチャーはシリコンバレーに多いIT系ではなく「モノづくりのスタートアップを中心とする」(泉沢清次社長)考えで、従来の発想にとらわれない新アイデアの製品や、ゲームチェンジャーとなる新技術の開発を加速する考えだ。

日刊工業新聞2019年5月30日

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