「新卒」面接解禁も…終身雇用難しく

変わる新卒一括採用の意義

 6月1日に2020年春の新卒学生を対象とした採用面接が解禁になる。ただ、空前の人手不足も手伝い、すでに約半数の学生が内々定を得ているという民間調査もある。企業の雇用のあり方が見直されつつある今、戦後の日本経済を支えてきた新卒一括採用はその意義も変わろうとしている。

 就職情報大手のディスコの調査によると、20年春に卒業予定の大学生・大学院生のうち、5月1日時点で内定(内々定)を得ているのは51・1%。前年同月を8・9ポイント上回った。人手不足で採用に関し企業の前のめり状態が続く中、今年は10連休があったこともあり、多くが内定出しを早めた格好だ。

 現時点で内定を出しているのは経団連非加盟企業。売り手市場だけに大手志向が強く、内定を得ていても過半数の学生は6月に選考が始まる一部の大手企業を中心に活動を続けるという。中堅企業幹部は「中堅・中小企業は(学生の)つなぎ留めに必死」と語る。

 企業の新卒採用選考を一斉に開始する「就活ルール」は国と経済界、大学で合意した1953年の就職協定にまでさかのぼる。「選考は6月解禁」という経団連ルールが定められたのは2017年卒採用からだが、初年度から形骸化が指摘されていた。経団連の就活ルールは21年卒からの廃止が決まっており、政府がルールを主導してつくる形式に切り替わる。

 混乱を避けるため当面は現状の日程を維持するが、採用期間のさらなる早期化、長期化は避けられないとの見方が支配的だ。

 ただ、経団連ルールの廃止は日本の採用システムが曲がり角を迎えていることを意味する。すでに、経団連と大学関係者らによる「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」の中間報告には一括採用中心の仕組みを改め、通年採用を拡大するなど複数方式による採用へ移行する方針を盛り込んでいる。

 背景にあるのはデジタル化とグローバル化の進展だ。企業が必要とする技術の変化も激しく、自前での人材育成では対応できていない。

 新卒一括採用は終身雇用を前提として、従業員の企業への高い忠誠心を育んできた。戦後の日本経済の成長を支えてきたが、産業構造が変わり、国際間競争も激しくなる中、経団連の中西宏明会長ら終身雇用制度の維持が難しいと公言する経済人も少なくない。暗黙の雇用保障がなくなれば、採用形式も変わる。そして、従業員と企業の関係性も変わることになる。
(文=栗下直也)

日刊工業新聞2019年5月31日

  

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