クルマ向け軸受、耐摩耗性を向上させるグリース潤滑

NTNがEV向け、回転摩擦抵抗を従来比62%低減

 NTNは新しい潤滑用グリースを採用して回転摩擦抵抗を従来比62%低減した自動車用軸受「低フリクションハブベアリングIII」を開発した。ガソリン車の燃費を約0・53%改善でき、車両輸送時の微振動で発生する摩耗も抑える。価格は従来品より数%高くなる見通し。燃費(電費)性能の要求が高い電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などに提案し、2023年度にも実用化する。25年度に売上高225億円を目指す。

 軸受内に充填する潤滑性の高いグリースを新たに開発した。ベースとなる基油、粘り気をつくる増ちょう剤、添加剤をそれぞれ見直して、配合を調整。摩擦抵抗を減らしつつ、寿命も向上した。低温時に流動性が落ちないようにして、寒冷地における車両輸送などの微振動で発生する「フレッティング摩耗」への耐性も高めた。

 生産面では軸受内の鋼球と内輪・外輪のすき間のバラつきを工程の工夫で抑えた。軸受部品の位置精度を維持するために加えていた圧力(予圧)を減らすことが可能となり、軸受の回転摩耗抵抗を減らせた。

 今回開発した軸受は09年開発の従来品と比べ、一度の給油で走行距離が4・5キロ―5・5キロメートル延ばせる計算になる。

日刊工業新聞2019年5月22日



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日本精工も開発


 日本精工は17日、自動車向け深溝軸受の耐摩耗性を向上させるグリースを開発したと発表した。成分の配合を最適化したことで耐熱性を確保しながら耐摩耗性を向上した。自動車の電動化や低燃費化に応じ、揺動環境下での耐久性向上を支援する。今後、同グリースを使用した自動車向け深溝軸受を販売。2022年に10億円の売り上げを目指す。

 同グリースは、増ちょう剤を金属と付着しやすいものに選定して、基油の粘度を下げることで増ちょう剤と基油を分離しやすくした。これにより増ちょう剤が軌道面に層を形成し、摩耗を抑制する。さらに耐熱性を維持するための添加剤を配合した。

 同社による実証では内輪の摩耗の深さが従来品で約6マイクロメートル(マイクロは100万分の1)だったが約1マイクロメートルとなった。ノイズは従来品比で70%低減した。

 現在、自動車は環境規制の強化に伴い、低燃費化や電動化が進められている。これにより揺動環境で軸受の軌道輪と転動体間の摩耗の発生と、それによるノイズや振動が懸念されるという。自動車用途では軸受は高温環境で使用されることも多く、耐熱性も求められている。

日刊工業新聞2019年4月18日



足元の業績は厳しく


 軸受各社に米中貿易摩擦、鋼材価格上昇などの障害が立ちはだかっている。2020年3月期連結業績について、ジェイテクトは前期並みを見込むが、日本精工とNTNは減収、営業減益を予想する。事業環境の先行きは不透明で、需要回復に過度な期待はできない。厳しい事業環境に耐えるための対策を急ぐ必要がある。

 日本精工は受注環境について「上期まで底ばいが続き、下期以降に緩やかな回復を織り込む」(野上宰門副社長)。自動車事業は中国で減税政策効果などにより、10月以降の車生産の回復を想定。産業機械事業も半導体製造装置や工作機械向け軸受などの需要が下期以降に徐々に戻ると予想する。ただ、両事業とも急回復は見込めない。また、米中貿易摩擦の激化や、英国の欧州連合(EU)離脱に伴う混乱などは織り込んでいない。

 ジェイテクトの売上高の3割弱を占める軸受は、20年3月期の売上高は前期並みの見込み。自動車や産業機械向け中心の中国向けは伸びが鈍るが、米中貿易摩擦の影響は限定的と見る。北米は減少、国内は前期並み。安形哲夫社長は軸受事業について「最近苦しんでいる。採算改善を強力にやっていく」と対策を講じる考えだ。

 NTNは19年3月期に中国などで自動車部品の落ち込みが大きく対策が追いつかなかった。そこで利益が出にくい国内生産拠点の収益体質を改善するために約170億円の減損処理を行い、当期赤字を計上した。20年3月期の自動車部品事業も「利益は厳しい」(大久保博司社長)と見て、営業減益は続く可能性がある。「早急な立て直しに着手したい」(同)と対策を急ぐ。
                       

日刊工業新聞2019年5月20日

  

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