工作機械、受注減速も業界に悲観論が少ないのはなぜ?

次の山へ“尾根伝い”

 日本の工作機械産業が3年ぶりに縮小する。日本工作機械工業会(日工会)は、2019年の年間受注高が前年比1割減の1兆6000億円になるとの予測を示した。17―18年と2年連続で過去最高を更新し、特に18年は初の1兆8000億円に到達する空前の活況だった。米中貿易摩擦を引き金に、潮目が変わった。それでも過去3番目の高水準。前年から受注高が3分の1程度に減った中国も今が底とする向きもある。安泰とはいえないが、悲観論は業界に少ない。

 「我々は谷に向かっているのではない。山から次の山へ尾根伝いに歩いているのだ」―。9日、都内で開かれた日工会の賀詞交歓会。飯村幸生会長(東芝機械会長)は、会場に集まった会員にそう語りかけた。

 19年の受注は18年から1割減る予測とした。18年10月に22カ月続いたプラス成長が途絶え、空前の活況は終焉(しゅうえん)を迎えた。とはいえ、予想は過去3番目の高水準を維持するもの。稲葉善治日工会副会長(ファナック会長)は、「今の状況を的確に表現された」と同調する。

 業界からは、「生産設備の全体需要が一気に落ち込む」という極端な想定はほとんど聞かれない。景気の先行きを可能な限り見極めようと商談時間が長引いているものの、引き合いそのものの件数は「減っていない」(飯村会長)という。

 中国は「ピーク時の2分の1ほど」(山崎智久日工会副会長=ヤマザキマザック社長)と大幅減は免れないが、日本、北米、欧州は底堅く推移するとの読みが多い。

 スマートフォン向けの設備需要が低調と見込まれるが、それでも「スマホ全体の成長率はまだ高い」(井上真一牧野フライス製作所社長)と、スマホ金型などを加工する同社製品は伸びしろがあるとみる。

引き合い「減らず」、要素部品「忙しさ続く」


 工場自動化(FA)機器大手の安川電機は、「今後の事業環境は正直分からない」(小笠原浩社長)と先読みの難しさを認めつつ、中国を中心に人手不足に伴う自動化や省人化需要は底堅いと見ており、「勢いは薄れるが市場全体が落ち込むとの想定はしていない」。

 また、日本精工は産業機械向けの軸受やボールネジなどの機械要素部品について、米中貿易摩擦で現地の輸出産業を中心に生産が伸び悩み、設備投資を様子見する影響を受けているという。

 ただ、風力発電や鉄道などインフラ関連の中国向け需要は堅調であり、「大型の軸受は忙しさが続いている」(内山俊弘社長)。中国市場を中心に先行きの不透明感が漂う中、工作機械産業にとって19年は高水準で“小休止”となりそうなものの、日米欧の3極の需要はいまだ底堅いといえそうだ。

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日工会・飯村会長に聞く


 ―直近の引き合い状況は。
 「減っていない。ただ、設備発注に躊躇(ちゅうちょ)がある。決定期間が延びているというのが会員各社の感覚だ。引き合い数が減ってくるとしんどいが、まだ相当に基盤は強いという印象だ」

 ―株価や為替の変動が大きい中、19年は1兆6000億円とした予測は強気すぎませんか。
 「届かない数字を言うことはない。米国の自動車ローンが不良債権化するとか、08年のリーマン・ショック級のことが起きなければ、一定の高さを保ちながら上下するだろう。特に日米欧は多少の減少はあっても、ショック的な大きな落ち込みはあり得ない。景気動向指標などによれば、生産財に対する投資意欲はある。仕事がなくて投資できないという状況ではない」

 ―18年の1兆8000億円との2000億円の差はどこにあるでしょう。
 「中国は18年よりは減る。欧州も政治的な不安定感から減る傾向にある。ただ、欧州は自動車が強い。大きなへこみはないと思う。日本と北米だけで月間1000億円、年間1兆2000億円くらいの受注は見通せる」

 ―中国は今が底でしょうか。
 「中国は良い時で月間400億―480億円の受注があった。これが18年11月は135億円まで落ちた。スマートフォン製造向けももう15億円しかない。ものすごく景気の悪かった16年で月間150億―200億円。すると今がほぼ底ではないかと思う」

 ―内外需の内訳は。
 「内需は10月の消費増税の影響とかではなく、9月以降に“たわみ”そうな感じがややある。読み切れないのが外需だ。自己資本で設備投資をすることが大半の日本企業と違って、海外は銀行借り入れなどが多い。金融の引き締めがあった時に影響が大きい。海外は貿易摩擦を含め、急変する感じが若干ある。内需は安定している。少し減るくらいだろう」
                  

(文=六笠友和、西沢亮)

日刊工業新聞2019年1月11日

  

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