ニュースイッチ

工作機械受注は17年1月以来の低水準。底打ち感打ち消す対中制裁関税

工作機械受注は17年1月以来の低水準。底打ち感打ち消す対中制裁関税

4月に北京で開催された工作機械の展示会

 景気の先行指標でもある工作機械受注。日本工作機械工業会(日工会)がまとめた4月の実績(速報値)は、前年同月比33・4%減の1086億5400万円で7カ月連続で減少した。2017年1月以来の低水準だった。米中貿易摩擦による市場の冷え込みと年度末明けに減少する季節要因があった。マイナス材料がある中でも、好不調の判断基準である1000億円を確保しており底堅さもうかがえる。

 18年4月は4月の最高額と高水準だったため、減少幅が膨らんだ。18年9月まで約2年間続いた好況に入る直前の、16―17年ごろの水準に戻った。うち内需は、同36・5%減の435億2000万円で5カ月連続で減少した。設備投資支援の補助金待ちや、景気の先行きを見定める様子見が顕著だ。

 外需は同31・1%減の651億3400万円で7カ月連続の減少だった。一部にスマートフォン(スマホ)関連の大口受注があった。

 一方、日刊工業新聞社がまとめた工作機械主要7社の4月の工作機械受注実績は、前年同月比27・3%減の321億1600万円だった。米中貿易摩擦による市況の悪化と年度明けの一服感があった。景気の先行きを懸念し、設備投資を控える様子見ムードが漂う。5月以降は、底打ち感のある中国でも、米国の対中制裁関税の追加策で投資が再度冷え込みかねない。

 7社の合計・内外需の全21項目のうち、唯一のプラスがツガミの外需だった。ツガミは韓国でスマートフォン(スマホ)関連を受注した。米国と、前年比減ながら底堅い中国に同スマホ受注が加わり、全体でも60億円に迫る高水準だった。ただ、同社内需は5カ月連続で10億円を下回った。

 オークマも内需が前年同月比約30%減で、全体が2年1カ月ぶりに110億円台にとどまった。年度明けの反動減のほか、「顧客が設備投資を絞っている感じがある」(マーケティング室)と投資判断が慎重になった。

 内需減少を10%以内に抑えたのは牧野フライス製作所とジェイテクトだ。牧野フライス製作所は国内で航空機の胴体向けのまとまった受注があった。航空機向けは4月以降もエンジン関連で引き合いがあり、前年活況だったロボット、半導体向けの剥落をどこまで補うかが焦点になる。スマホ向けは「2019年10月―20年3月の立ち上がりを期待している」(IR課)。

 ジェイテクトの内需は3月からの繰り越しがあった。同社外需は半減したが、5月に海外で大型案件を予定しており、「4月は年間計画の谷間だった」(広報部)と一時的な落ち込みのようだ。自動車関連で同社競合の三菱重工工作機械(滋賀県栗東市)は全体が同約80%減で7億円だった。設備投資支援の国内補助金の採択待ちがあったという。

 中国市場は4月までに底打ちしたと見る向きがあった。ただ、5月上旬に米国の対中制裁関税が発表。「発表前後で、前向きだった顧客の投資姿勢が悪く変わっていなければいいのだが」(工作機械メーカー幹部)と、底割れに警戒が広がる。

<関連記事>
市場規模が2兆円?「日本の工作機械はデジタル化で3兆-4兆円産業になる」


                     
日刊工業新聞2019年5月17日

編集部のおすすめ