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東芝が「ローカル5G」で狙う市場とは?

スマート工場サービス事業に乗り出す
 東芝は2020年度にもローカル5G(用語参照)を利用したスマート工場サービス事業に乗り出す。1―2年かけて自社工場で実証実験を重ね、実用化を目指す。高速、低遅延、多数同時接続という次世代通信の特徴を生かし、顧客の工場ごとに最適化したIoT(モノのインターネット)システムを構築する。オフィスビル向けサービスも検討する。

 東芝は府中事業所(東京都府中市)などで5G基地局や端末を設置し、各種実証を通じてスマート工場サービスを開発する。製造設備や作業員の付けるウエアラブルデバイス、荷役車両などを無線でつなぎ、データ収集・分析を行う。モノづくりの高度化に向けてノウハウ蓄積を図る。

 5Gは速度などの性能調整幅が大きい。高速・大容量や低遅延、多接続を特徴とし、利用者のニーズに応じて低遅延など一つの性能に特化した通信設定も可能。ローカル5Gは重要インフラの機密情報を自社の通信網内にとどめられる点も製造業のセキュリティー需要に合致する。

 一方、主に割り当てられる28ギガヘルツ帯の場合は障害物に弱く、設備が並ぶ工場内では通信の途絶が頻発する可能性がある。東芝は自社での実証でローカル5G利用における課題などを抽出し、スマート工場サービスの実用化を目指す。ローカル5G利用のサービスは、パナソニックやソニー、富士通、NECなども興味を示している。

 5Gの効果的な活用法をめぐり、今後は業種の垣根を越えたサービス開発競争も激しくなりそうだ。

【用語】ローカル5G=特定の地域と自営用途に限って携帯電話事業者以外の事業者にも第5世代通信(5G)の周波数が開放される。総務省は19年秋にも28ギガヘルツ帯を中心に事業者へ割り当てる方針。工場やビル以外にも競技場や空港、農地、病院などでのローカル利用を想定する。

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