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JDIも東芝も、構造改革に待ったをかける中国の混沌

米中貿易摩擦のはざまで日本企業が漂流
JDIも東芝も、構造改革に待ったをかける中国の混沌

JDIの月崎義幸社長兼最高執行責任者〈COO〉、12日)

 米中貿易摩擦などを背景にした中国リスクが、電機各社の構造改革に影を落とす。ジャパンディスプレイ(JDI)は12日に中台企業連合からの出資受け入れを決めたが、中台各社の機関決定は下旬以降で不透明感が残る。東芝も、撤退する米国液化天然ガス(LNG)事業で中国の売却予定先から契約解除を通告された。2000年代の米国企業は低収益・高リスク事業を日本企業などへ売却してリストラを断行。日本勢も倣いたいが、中国リスクが待ったをかける。

 JDIへ出資する中台企業連合「Suwaコンソーシアム」は、中国ファンド最大手のハーベストグループと台湾タッチパネル大手のTPK、台湾金融大手の富邦グループが参加する。ただ、“約束”された出資の機関決定はまだなされておらず、台湾2社が4―5月、ハーベストは6月上旬の予定という。

 「双方の機関決定が済んでからの発表がベストだとは認める。ただ、我々として資金調達を急ぐ必要があった」(JDI幹部)と資金繰りを優先させた。中台連合の出資を前提に、現在の筆頭株主で政府系ファンドのINCJ(旧産業革新機構)が空白期間の金融支援を担う。

 中台連合からの実際の出資に不確実性は残るが、「資本注入に十分な形での確認が取れており、事前相談した当局からもそのように判断をいただいた」(同)と、後は信じて待つのみ。

 加えて、対米外国投資委員会(CFIUS)の動向も気になる。米国は中国との貿易摩擦により中国企業の絡むM&A(合併・買収)に神経をとがらせている。「弁護士事務所などに確認した上で、基本的にCFIUSの審査対象に該当しないとの意見をもらっている」(同)と楽観的だが、CFIUSが反対を表明する可能性は捨てきれない。

 東芝の米LNG事業を買収予定だった中国ガス大手のENNグループの翻意も、CFIUSの審査遅れなどが影響したようだ。東芝はENN側から29日以降に書面通知を受け取り次第、今後の対応を判断する。1兆円規模の損失が発生する可能性のあるリスク案件だけに、取り扱いを誤れば再び経営危機に逆戻りする恐れがある。

 1980年代から半導体やテレビで世界市場を席巻していた日本のエレクトロニクス産業。一方、守勢に回った米国勢は構造改革で生き残りを図った。この中で日本企業は米企業から事業買収を進めた。日立製作所は02年に米IBMからHDD事業を買収。東芝は06年に英国原子燃料会社(BNFL)経由だが、米国原発大手のウエスチングハウス(WH)を買収した。

 ここに至り日本勢も“米国流”に倣って事業の選択と集中を進めたいが、現状で買い手を探せば、資金力があり製造強国を目指す中国勢に行き着くのは明白だ。今のままでは米中貿易摩擦のはざまで日本企業が漂流しかねない。
(文=鈴木岳志)

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