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世界初「ワイン注文×ブロックチェーン技術」実証実験の中身

エシカル消費を促す情報流通の仕組み検証
世界初「ワイン注文×ブロックチェーン技術」実証実験の中身

ブロックチェーンでトレーサビリティーが保証された香月ワインズの有機ワイン。実証実験のために50本限定でフランスに空輸される

 電通国際情報サービス(ISID)とシビラ(大阪市西区、藤井隆嗣社長、06・7878・8018)、フランスのバルドワーズ県経済開発委員会(CEEVO)の3者は、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を駆使した「エシカル(倫理的)消費」の実証実験をパリのレストラン「ゼブラ」で8―10日に実施する。実験では、消費行動を国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関連付け、トークン(取引記録)として可視化。トークンエコノミーの実現性を検証する。

 エシカル消費とは、地球環境や人、社会などに配慮、貢献する消費行動のこと。売り上げは全額をパリのノートルダム大聖堂再建用に寄付する。

 ISIDとシビラが共同開発中の「トークンエコノミープロトコル(TEP)」を導入し、汎用プロトコルからトークンを付与する仕組みを世界で初めて実現する。エシカル消費を促す情報流通の仕組みとしても、世界初の事例となる。

 実験には、完全無農薬や植物性堆肥にこだわったワイナリー(ワイン醸造所)を営む宮崎県綾町の香月ワインズが協力。土作りからブドウの作付け、収穫、醸造、加工、出荷、輸送まで、すべての履歴をブロックチェーンに記録した50本の有機ワインを実験のため仏に空輸する。

 実験では、レストラン来店客にゲーム感覚の演出を提示。来店客が演出を楽しんだ後、香月ワインズのワインを注文すると、SDGsのゴール13(気候変動)やゴール15(陸の生物多様性)などに貢献できることをひと目で理解できるように工夫する。その後、注文がエシカルな貢献をしていることを証明するトークンとしてブロックチェーンに記載する。

 香月ワインズは、自然生態系への負荷を低減したワイン作りにこだわる。その生産哲学を分かりやすく伝え、実際の注文に結びつけられるかが実験の焦点。注文したことがトークンとして注文者自身の評価に還元される取り組みが理解、定着するかも重要なポイントとなる。

 商品やサービスを選ぶ際に、社会や環境に配慮しているかどうかを重視するエシカル消費は、新しい消費のかたちとして世界的に関心を集め、特に欧州を中心に広がりを見せている。
(文=編集委員・斉藤実)
日刊工業新聞2019年5月8日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
ブロックチェーンは「仮想通貨」のイメージがありますが、サステナビリティの文脈でも登場します。「海外で、エシカルで、ワインで、SDGs」の組み合わせもユニークです。数週間先の日刊工業新聞「SDGs面」でもブロックチェーンで社会課題解決に挑む企業を紹介します。

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