ブロックチェーンは貿易コストを6割削減する
NTTデータがコンソーシアム発足、基盤整備へ
NTTデータが貿易分野でのブロックチェーン(分散台帳技術)の適用に向け動きを加速している。2019年春にも、ファーストステップとして金融機関と荷主の情報連携部分で商用化する。各種データを既存の紙と併用した形で電子化を進める。貿易情報連携基盤が本格的に稼働すると荷主、保険会社、銀行、船会社などが、従来に比べ貿易プロセスやコストをそれぞれ約60%程度削減できる。
NTTデータは17年にブロックチェーンを活用した貿易情報連携基盤のコンソーシアムを、国内の大手銀行、商社、保険、船会社など13社と立ち上げた。17年度内には住友商事が加入し、18年度は商社やコンテナ船事業を手がける「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス」(ONE)など5社が参画し、オールジャパンの体制で貿易情報連携基盤の実現を進めている。
同コンソーシアムは17年度にビジネス・運用ルールの検討や概念実証(PoC)に着手し、18年度から月に2回の議論を進めながらファーストステップに向けた詰めの作業に取り組む。文書や業務の上流部分の電子化から始め、保険会社や船会社との連携を組み込むかは協議中。ブロックチェーンで重要となるノード(分散管理されたネットワークに参加するためのプログラム)は、まずはNTTデータや同コンソーシアムが持つことを想定し、軌道に乗り次第、利害関係者ではない公的な機関が保持するよう進めていく。
開発を進める貿易手続き情報共有化システムを応用プログラムインターフェース(API)で結ぶことで、アプリケーション(応用ソフト)ベンダーや中堅・中小事業者の参画も可能になる。
また、NTTデータは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から採択を受け、貿易手続きの効率化・システム化も進めている。構築したシステムは航空貨物通関情報処理システム(NACCS)とも連携する。同事業は2018年度中に実証実験を実施する。
貿易システムの連携は国内にとどまらず、国境を越える。NTTデータは、シンガポールの税関システムとブロックチェーン貿易プラットフォーム間で電子データの貿易書類を交換するPoCを実施し、既存システムとブロックチェーンの連携を試した。NTTデータはファーストステップ以後の取り組みとして、シンガポールとの連携も想定する。
ブロックチェーンだけでは埋まらない溝もある。社会実装のためにNTTデータが進めるのは、人工知能(AI)を活用したブロックチェーンの補完だ。貿易手続き情報共有化システムで扱うデータをすべて標準化することは現実的ではない。人間のノウハウや暗黙知をAIが学習することで非構造化データでも取り込むことができるようにする。AIにより情報がシステムに正確に入りさえすれば、情報の流通も可能になる。
ブロックチェーンによる貿易取引の電子化が加速する一方、課題も残る。それは、船会社などが発行し貨物の引き受けの証明や受け取りの際にも根拠となる「船荷証券」だ。船荷証券は有価証券であり、現法上は“紙”でなければ効力を持たない。ブロックチェーンの特徴の一つであるデータの耐改ざん性によって、法的にも原本と認められる必要がある。NTTデータデジタル戦略推進部ブロックチェーンチームの赤羽喜治部長は「電子化されたものも原本として認められるようにするのは非競争の領域だ。さまざまな主体と連携したい」と話す。
紙やFAX、PDFなどの文化が色濃く残る貿易領域をデータ化することで、そのデータを活用した新ビジネスも想定できる。AIによる分析で新事業を創出できるか、貿易ブロックチェーンの商用化がイノベーションのカギとなる。
(文=川口拓洋)
NTTデータは17年にブロックチェーンを活用した貿易情報連携基盤のコンソーシアムを、国内の大手銀行、商社、保険、船会社など13社と立ち上げた。17年度内には住友商事が加入し、18年度は商社やコンテナ船事業を手がける「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス」(ONE)など5社が参画し、オールジャパンの体制で貿易情報連携基盤の実現を進めている。
同コンソーシアムは17年度にビジネス・運用ルールの検討や概念実証(PoC)に着手し、18年度から月に2回の議論を進めながらファーストステップに向けた詰めの作業に取り組む。文書や業務の上流部分の電子化から始め、保険会社や船会社との連携を組み込むかは協議中。ブロックチェーンで重要となるノード(分散管理されたネットワークに参加するためのプログラム)は、まずはNTTデータや同コンソーシアムが持つことを想定し、軌道に乗り次第、利害関係者ではない公的な機関が保持するよう進めていく。
開発を進める貿易手続き情報共有化システムを応用プログラムインターフェース(API)で結ぶことで、アプリケーション(応用ソフト)ベンダーや中堅・中小事業者の参画も可能になる。
また、NTTデータは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から採択を受け、貿易手続きの効率化・システム化も進めている。構築したシステムは航空貨物通関情報処理システム(NACCS)とも連携する。同事業は2018年度中に実証実験を実施する。
貿易システムの連携は国内にとどまらず、国境を越える。NTTデータは、シンガポールの税関システムとブロックチェーン貿易プラットフォーム間で電子データの貿易書類を交換するPoCを実施し、既存システムとブロックチェーンの連携を試した。NTTデータはファーストステップ以後の取り組みとして、シンガポールとの連携も想定する。
ブロックチェーンだけでは埋まらない溝もある。社会実装のためにNTTデータが進めるのは、人工知能(AI)を活用したブロックチェーンの補完だ。貿易手続き情報共有化システムで扱うデータをすべて標準化することは現実的ではない。人間のノウハウや暗黙知をAIが学習することで非構造化データでも取り込むことができるようにする。AIにより情報がシステムに正確に入りさえすれば、情報の流通も可能になる。
ブロックチェーンによる貿易取引の電子化が加速する一方、課題も残る。それは、船会社などが発行し貨物の引き受けの証明や受け取りの際にも根拠となる「船荷証券」だ。船荷証券は有価証券であり、現法上は“紙”でなければ効力を持たない。ブロックチェーンの特徴の一つであるデータの耐改ざん性によって、法的にも原本と認められる必要がある。NTTデータデジタル戦略推進部ブロックチェーンチームの赤羽喜治部長は「電子化されたものも原本として認められるようにするのは非競争の領域だ。さまざまな主体と連携したい」と話す。
紙やFAX、PDFなどの文化が色濃く残る貿易領域をデータ化することで、そのデータを活用した新ビジネスも想定できる。AIによる分析で新事業を創出できるか、貿易ブロックチェーンの商用化がイノベーションのカギとなる。
(文=川口拓洋)
日刊工業新聞2018年11月26日