連休どこにも行けなかった…という人へ。気軽に東京・奥多摩サイクリングはいかが?

駅にレンタサイクル配置、ビジネスモデル少しずつ

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 東京・多摩地区で観光産業が盛り上がりを見せている。JR東日本が地域のブランド戦略を進めているほか、産業機器設計を手がけるテクノム(東京都青梅市、沼倉正毅社長、0428・21・3611)がレンタサイクル店を新設。産学公の連携体制を整え、自然豊かな奥多摩を舞台にしたビジネスモデルを構築、多摩地区の魅力を伝える。

 テクノムが手がけるレンタサイクル店「MINACLE(ミナクル)」が、JR青梅線の御嶽駅(東京都青梅市)内に4月27日にオープンした。オープン当初は人員を配置するが、無人貸し出しを主体に運営する方針だ。全地球測位システム(GPS)搭載の電動アシスト自転車を25台用意し、1日2500円(消費税込み)で利用できる。年間利用者数で2000人程度が見込まれる。

リニューアルオープンしたJR青梅線・御嶽駅も多摩のブランド力を高める

 JR東日本はJR青梅線の青梅―奥多摩駅間を「東京アドベンチャーライン」と愛称をつけ、地域のブランド戦略を進めている。御嶽駅は3月にリニューアルオープンし、観光拠点駅として新たなスタートを切ったばかり。テクノムは、その地に新たなレンタサイクル店を開設し、魅力発信に努めていく。

 テクノムが観光業に参入する転機となったのはリーマン・ショック。売上高の落ち込みが激しく、事業展開に行き詰まりを感じた2009年ごろに取り組みを始めた。奥多摩から青梅への2次交通手段が少ないことが課題だと感じていたことが、新規事業の着想につながった。

 「当時は青梅市、奥多摩町でレンタサイクル店はなかったと認識している」と沼倉社長は振り返る。事業化にあたり、観光客のニーズを把握するため、社長自らが奥多摩駅前で調査に乗り出し、リアルな意見を求め、ニーズを探った。

1日2500円で利用できる電動アシスト自転車(JR東日本八王子支社提供)

 事業計画をまとめ、東京都中小企業振興公社の「東京都地域中小企業応援ファンド事業」の地域資源活用型ビジネスに採択された。そして、11年に奥多摩駅前にレンタサイクル店「TREKKLING(トレックリング)」をオープンした。年間平均利用者数は3000人程度だという。「外国人利用客も8%程度はいると見ている」と沼倉社長は話す。台湾や中国の利用客が多いそうで、御岳山・御岳渓谷エリアには欧米系の利用客が増えているという。レンタル自転車が多摩地区の興味を広げる一助になっている様子だ。

 JR青梅線の青梅駅と河辺駅(東京都青梅市)前の自転車店に返却できるシステムを構築したほか、日本酒「澤乃井」ブランドで知られる小澤酒造(同市)でも返却可能だ。

JR御嶽駅内にあるレンタサイクルの受付(JR東日本八王子支社提供)

 サイクリングで体を動かした後に地域の名産品を味わえる体験にもつながり、地域の魅力を伝える工夫が施されている。

 ミナクルは、東京都と東京観光財団の実施する「観光経営力強化事業」の一環で、首都大学東京の都市環境学部観光科学科・清水哲夫教授がアドバイザーにつき、協力体制が整っている。また、電動自転車に装着したGPSで得られた利用者データを有効活用していく方針だ。

 何かの事故に巻き込まれた時や、障害物の存在を特定する判断材料になることはもちろんだが、清水教授は「利用客が立ち止まっているポイントに実は絶景ポイントがあった、というように知られざる観光名所の発見の可能性もある」という。利用者の行動から、新たな観光スポットを生み出し、観光発展の好循環を生む可能性も秘めている。

 訪日外国人(インバウンド)需要に期待が集まる観光産業。東京五輪・パラリンピックまで約1年。都市再開発も進む中、地域の魅力を伝える観光業の発展も日本経済を支える上で重要だ。産学公の有機的な協力関係が、地域の魅力発信につながる。
(西東京・茂木朝日)

日刊工業新聞2019年5月6日

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