経営統合を迫るルノー、日産は5年半ぶりのCOO職復活でけん制

企業統治改革も“同床異夢” 、取締役人事に焦点に

 日産自動車は、6月下旬開催の定時株主総会に向け準備を急ぐ。取締役の過半を社外取締役にし、「指名委員会等設置会社」へと移行するガバナンス(企業統治)改革を株主に諮る方針で、前会長カルロス・ゴーン被告が率いた旧体制から脱却する節目になる。一方、4月中旬には筆頭株主の仏ルノーが日産に経営統合を提案した。ルノーは“ゴーン後”も日産への主導権を維持したい考えとみられ、その言動は日産の新体制構築の波乱要因になりかねない。

 日産はガバナンス不全がゴーン被告の不正を許した要因の一つとみる。外部有識者らをメンバーに設置した「ガバナンス改善特別委員会」が3月末にまとめた提言に沿って改革を進める。

 具体的には統治形態を現在の「監査役設置会社」から指名委等設置会社に移行するほか、取締役を11人程度にし、そのうち過半を社外取(従来は計9人のうち社外取は3人)にする計画。6月の定時総会で決議し7月から新体制に移る方針。

 焦点は取締役候補の人選だ。現在、社外取3人をメンバーとする暫定指名委員会が候補者を絞り込んでいる。ここにルノーが介入する懸念がある。

 かねてルノーは筆頭株主の仏政府の意向もあり日産との関係強化のため経営統合を望んできたが、日産は反対してきた。連合を率いたゴーン被告の退場で両社の意見対立が表面化し、一時は主導権争いが激化した。

 ただ両社は「連合関係を維持していく方向性では一致」(日産関係者)しており、安定化に取り組んできた。12日には、三菱自動車を含めた3社連合首脳による新たな合議体の初会合をパリで開き門出を祝った。

 しかしスナール氏はこの日と前後して西川広人日産社長兼最高経営責任者(CEO)に経営統合を打診した。「やっと落ち着きを取り戻してきた」(同)という連合を再び揺らす提案を持ちかけた狙いは何なのか。日産の定時総会後の新体制でも支配力維持を狙うルノーの思惑が透ける。

 実際にスナール氏は経営統合の提案と合わせてルノーのティエリー・ボロレCEOを日産の取締役とすることや、ルノー出身者を最高執行責任者(COO)以上のポストに就任させるよう求めた。統合推進派を送り込み統合への地ならしを進める考えとみられる。

 日産は23日、5年半ぶりにCOO職を復活させ山内康裕チーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)を充てる一方、ルノー出身のクリスチャン・ヴァンデンヘンデ氏が新設の副COOに就く人事を発表した。COO以上のポストを狙うルノーを事実上けん制した格好で、両社の緊張が高まる可能性がある。

 日産は5月中旬には取締役候補など定時総会の議題を固める予定。それまでにルノーから次の矢が放たれるのか。ある政権幹部はこう身構える。「日産のガバナンス改革に水を差すようなことがあれば、それは政府として対応しないといけない」。

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。