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消滅可能性都市からの行き先は“ムーミン谷駅”

西武鉄道と飯能市が「飯能駅」を拠点に仕掛ける
消滅可能性都市からの行き先は“ムーミン谷駅”

駅名表示にはムーミンの絵が描かれる

西武鉄道・池袋線の飯能駅(埼玉県飯能市)は3月、フィンランドのデザイナーによって、北欧風にリニューアルした。フィンランドの童話「ムーミン」のテーマパーク「ムーミンバレーパーク」が、駅に近い宮沢湖で開業したことに合わせたもの。コンコースやホームは森林をイメージしたオブジェが飾られ、駅の利用者を誘うカモメが舞う。

 西武は今回のリニューアルの狙いを「観光の拠点と位置付け、沿線外から来てもらえる駅を目指した」(京尾淳一計画管理部鉄道計画課課長補佐)と話す。飯能は自然あふれる土地柄ながら、川越や秩父などに比べ、観光地としての知名度は低い。大型レジャー施設の開業を機に、最寄駅から北欧気分が味わえる仕掛けを施した。

 リニューアルにあたり、西武はフィンランド大使館とコンペを共催し、フィンランドの会社にデザインを依頼。設計から完成までの一連の作業は言葉の壁もあり、これまでにない苦労があった。当初のデザイン案には、安全性の観点から駅では使えない材料があり、変更するためのやりとりにも時間を要した。

 ムーミンバレーパークは、北欧の世界観が楽しめるテーマパーク「メッツア」の一部。駅や宮沢湖など飯能一帯の「フィンランド化」は西武だけでなく、飯能市の強力なバックアップがある。飯能市は少子高齢化などから「消滅可能性都市」の一つにあげられ、強い危機感の中、メッツアを誘致。立地決定後も、ふるさと納税に「ムーミン基金」を設置し、集めた2億円を事業に投入するなど支援体制を構築した。

 飯能駅はムーミンバレーパーク開業から約1カ月で乗降客数が前年比1割増と堅調。官民一体の取り組みで沿線外から観光客を呼び込めれば、町おこしの成功例となりそうだ。
飯能駅通路の頭上に設置されたカモメ

【概要】西武池袋線の特急や急行の停車する主要駅の一つで、多くの列車が折り返す。2017年度の1日の乗降者数は3万2101人。
日刊工業新聞2019年4月18日

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