これしかない!子どもヒントに“たこ焼きロボ”

コネクテッドロボティクス社長・沢登哲也 ③

 私は2017年4月に、今も続く調理ロボットのプロジェクトを開始するまで、以前働いていた企業と、中国や韓国、台湾の大手メーカー向けに産業用ロボットのコントローラの開発をしていた。とにかく、私はロボットで飲食業を盛り上げたいと考えていたので、16年末ごろから、具体的にロボットが飲食業で何を手伝えるかとアイデアを練っていた。

 だが、まだ市場調査は一切しなかった。はやり廃りに左右されたくないし、他人がどうするではなく、自分の思いに素直に従いたかったからである。

 数カ月間アイデアをいくら出しても、実現性を考えるとその難しさに萎縮し、どのアイデアも実行しようとは思えなかった。その時、仕事の契約は17年3月末まで、としてしまっていたから4月からは何もやることがない。考えてもうまくいかない焦りの中、時間だけが過ぎた。

 17年3月下旬に、たまたま小学生のたこ焼きパーティーに誘われた。そのパーティーで私は子どもたちにたこ焼きを焼くことにした。たこ焼きを焼くのは慣れてはいなかったが、たまたま「やってみたい」と思ったのである。これがたこ焼きをロボットでやるきっかけになった。

 たこ焼きを焼いていると、子どもたちは興味津々に私の周りに集まって、焼きあがるまでじーっと見ている。そして、できあがったたこ焼きをおいしそうに食べてくれる。その様子を見て、私は「これしかない!」と思った。

 最初は衝動に近いものだった。だが、後でたこ焼きの調理について分析すると、(1)お客さんが見ても食べても楽しめる(2)調理する人は熱い鉄板の前での手作業が続き大変(3)ロボットにはそれほど難しくない作業である(と、その時は甘く考えていた)―といった要素がそろい、絶好の課題だと思えた。


 私は早速、そのアイデアを試し、客の反応を確かめたり仲間を集めたりしたいと考え、起業イベントに参加することにした。「Dobot(ドボット)」という小型の教育用ロボットを使い、実際にたこ焼きを焼くロボットを作ってみた。これは子どもにも大人にもウケた。小型ロボットなので家庭の食卓にあってもほぼ違和感がない。かつ、ワクワクする楽しいものと受け取られた。

 そのイベントで優勝し、最初に協力してくれる仲間や人脈ができた。私たちコネクテッドロボティクスの最初の挑戦である、たこ焼きロボット「OctoChef(オクトシェフ)」のプロジェクトは、こうして始まった。

 そして、ここから先は、ロボットシステムを実用化するための苦労を嫌と言うほど味わうことになる。次回はその辺りに触れたい。(全8回、毎日掲載)

日刊工業新聞2018年9月7日(ロボット)

  

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