研究で鬱になったロボットエリート、“たこ焼き”で起業した理由

コネクテッドロボティクス社長・沢登哲也 ①

たこ焼きロボット
 人手不足を背景に、ロボットの需要は依然として高い。これからのロボット産業に求められるものは何か、気鋭のロボットベンチャー経営者に語ってもらう。初回はコネクテッドロボティクス社長の沢登哲也氏。

 「調理をロボットで革新する」をテーマに私たちコネクテッドロボティクスは飲食店向けの調理ロボットシステムを開発している。第1弾の自動たこ焼き調理ロボットサービス「OctoChef(オクトシェフ)」は今夏(2018年時点)発売予定で、すでに多くの引き合いを頂いている。

 「なぜ調理をロボットでやるのか?」「なぜ最初にたこ焼きを選んだのか?」「今後どのように展開するのか?」「調理や飲食業務のロボット活用や人手不足への対応はどのように進むのか?」―よく聞かれるこれらの質問にこれからの連載でお答えしたい。

 まず、私は大学と大学院でロボットやコンピューターサイエンスを学び、NHKが主催するロボットコンテストで優勝を経験した。好奇心にあふれた典型的な技術好き学生だったと思う。転機が訪れたのは、大学4年生の時に「研究」を始めてからだ。工学部生だったので当然、卒業研究をする。だが、それが自分に向かなかった。それまで私は仲間たちと好きなロボットを作ったりゲームを作ったりといった大小さまざまなプロジェクトに関わった。それは好きで楽しいからやっていたのであって、「卒業するため」とか「お金をもらうため」といった間接的な理由ではなかった。

 研究で鬱(うつ)になってしまった私が気がついたのは、仕事をするならひたすら夢中でのめり込めるようなことをやるべきだということだ。とはいえ、やってみるまで何がおもしろいかわからない。問題はそれは誰かを喜ばせているかどうかだ。やはり、自分が作ったもので誰かが喜んでいるという体験はとても大きなやりがいになる。現在の事業の動機はこれらの学びが大きかったように思う。

 私は大学院に進んだものの、自分が「研究」という活動に向いていないことがはっきりしたので英国ロンドンで1年間インターンシップをしたり友人とITサービスを始めてみたりした。当時はまだロボットで起業するということは大それたことで考えてもみなかった。ITサービスは「誰かを喜ばせている」という手応えがどうしても持てなかったので、一旦、技術にこだわらず別のことをやってみようと思い立ったのが飲食店だった。祖父母や親戚も飲食店をやっていたし、自分がイメージする「かっこいいお店」を作りたいと思って始めた。

 飲食業は手応えのある楽しい仕事だった。しかし、1年間ひたすら働いた後にあまりの長時間労働にうんざりした。これを解決するのはロボットしかない。そうして私はロボットの世界に戻った。(全8回、毎日掲載)【連載】
コネクテッドロボティクス社長・沢登哲也②

日刊工業新聞2018年6月8日

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