「従業員の満足」、民間主導で規格化する狙い

 日本規格協会(JSA)とディスコは、2017年にJSAが創設した民間規格「JSA―S」の第1号案件として、「JSA―S1001」を共同でまとめた。従業員が働きがいを感じ、健康に働けるよう職場環境などを整えることを求める規格となった。JSAの揖斐敏夫理事長、ディスコの関家一馬社長の両氏にJSA―Sへの取り組みを聞いた。

日本規格協会理事長・揖斐敏夫氏に聞く


 ―JSAとして民間規格制度「JSA―S」を創設した理由は。
 「7月にJISが日本工業規格から日本産業規格へ名称が変わり、サービスなどが標準化の対象に加わる。サービス系の規格化が促進されるが、日本は欧州などと比べればまだ同分野の規格化は遅れている。公的規格で対応できないものについて、JSA―Sで対応していく」

 ―公的規格で対応できないものとは、どのようなものですか。
 「公的規格はコンセンサスをとりながら作業を進めるため、一定の時間がかかる。(産業界で)デジタル化が進んでいるが、公的規格の策定は最先端の技術を(いつも)基本にしているわけではない。日進月歩の技術を考えると、公的規格よりも民間規格で素早く対応する必要がある」

 ―第1号案件はディスコからの提案でした。同案件への期待を。
 「ディスコが中身を作り、当協会で規格の形に整えた。構成要素を計6種類に分けるなど、非常に良い規格に仕上げたと自負している。JSA―Sが広がる可能性を示した事例となった。こうした民間規格を作るニーズも徐々に増えていくのではないか」

 ―JSA―Sの今後の展開は。
 「5月にエクセレントサービスの規格をJSA―Sで策定し、ISO(国際標準化機構)の技術委員会に提案する。保険商品の比較でJSA―S規格をまとめることも検討中。また機械翻訳を活用しながら安価に、JSA―SでISOのサービス系規格を紹介したい」

ディスコ社長・関家一馬氏に聞く


 ―規格作りに取り組んだ経緯を教えて下さい。
 「米国に転勤する社員が全社的な取り組みとして、従業員満足度を高める方策をまとめていた。転勤を契機にこれが風化するのはもったいないと、規格作りに着手した。ISO化を検討したが、ハードルを下げてJSA―Sに申請することにした」

 ―なぜ従業員満足度を高めることに焦点を当てたのですか。
 「従業員の企業への定着が、製品品質に関わると考えている。人材が流動的で作業に熟練していないと、ミスが起こりやすい。また、個人が意欲的に仕事に取り組む『内的動機』も重要だ。(一人ひとりが自らの)内的動機で取り組んだ仕事は良い結果が出ている」

 ―JSA―S1001のどういった活用を期待していますか。
 「当社のサプライヤーに活用してほしいと考えている。ミスが当社でも発見できず、次へと渡っていく可能性もある。両者でミスをなくしていくことが製品の品質向上につながると考えている。ディスコ単独規格ではなく、JSAが展開するJSA―Sの一規格であれば取り組みやすいはずだ」

 ―JSA―Sを策定する上で重要な点は何ですか。
 「普遍的な内容にまとめたが規格作りに当たっては、狙いをきっちりと見極めていく必要がある。狙いをどこに定めるかを明確にしなければ、協働するJSAもやりづらくなる。JSA―S1001のISO化は、必要性があれば検討する」

【記者の目】
 7月から品質のみならずサービスや経営管理も対象にした「日本産業規格」制度が始まる。ただ、新たな制度の狙いに基づいて生まれた規格をどういった形で取り込んでいくか、イメージがつかない企業も少なくないはず。従業員満足度を反映したJSAとディスコによる民間規格「JSA―S1001」がその道筋となりそうだ。
(石宮由紀子)

日刊工業新聞2019年4月11日

  

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