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九州電、川内原発1号機を再稼働-新規制基準で初

次世代エネルギー技術の実用化までのつなぎ役に
九州電、川内原発1号機を再稼働-新規制基準で初

九州電力川内原子力発電所


社説/川内原発再稼働−実績を積み、国民の不安一掃目指せ


 九州電力の川内(せんだい)原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)1号機が11日、再稼働した。東日本大震災後に制定した厳しい規制基準の下での再稼働は全国初となる。ここに至るまでの関係者の努力、ならびに地元住民と自治体の理解に敬意を表したい。

 1基のみとはいえ、日本が「原発ゼロ」の異常事態を脱した意味は小さくない。直接的には九州地区と連系線でつながった西日本全体の電力の予備率が高まり、安定性が増す。間接的には原発代替の燃料輸入による海外への資金流出を抑制し、マクロ経済のプラス要因となる。

 いずれも長期的な視野で国民の生命と財産を守り、日本の産業競争力を高めることにつながる。川内に続いて、安全が確認できた全国の原発を着実に再稼働するよう政府と電力各社は努力を続けてもらいたい。

 残念ながら、国民の一部には原発への不信と不安が色濃く残っている。東京電力福島第一原発事故の収束作業が難航し、周辺住民の帰宅のめどが立たない中では、否定的な感情があるのも当然だ。川内原発は、安全審査の合格から再稼働まで1年近い時間を要した。技術的には無意味といわれる長時間の準備の背景には、そうした国民感情への配慮があった。

 しかし、いくら言葉を尽くして説明し、物理的な対策を施したとしても不安の一掃は難しいのが現実だ。百年河清を待つより、実績によって原発の安全性を国民に知らせる方が、理解を得やすい部分もあるかも知れない。

 再稼働後の原発に欠かせないのは、安全神話からの脱却である。「絶対に安全でなければ原発を稼働してはならない」という一部の極端な主張が、過去のゆがんだ安全神話を生んでしまった。

 「絶対の安全」など、この世のどこにも存在しない。原発は保守・運用を怠れば大惨事を招くという当然の事実を意識し、常にリスクを軽減する方策を探し、実施することが関係者の責務だ。産業界も、その姿勢を期待している。今後、実績を積むことで国民の不安を一掃してもらいたい。
日刊工業新聞2015年08月12日 2/4面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
産業界としては「やっと再稼働してくれた」という感じでしょうか。今後、自然エネルギーの割合が増すとは言え、ソーラーパネルをつくるにも電力が必要なわけで、これから日本がどんな産業で“食べて”いき、そのためにどのようなエネルギーがどれだけ必要なのか考える必要があると思います。

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