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九州電、川内原発1号機を再稼働-新規制基準で初

次世代エネルギー技術の実用化までのつなぎ役に
九州電、川内原発1号機を再稼働-新規制基準で初

九州電力川内原子力発電所


 ただ原子力事業の推進には依然、多くの課題がある。使用済み核燃料に含まれるウランやプルトニウムを再利用する核燃料サイクルの本格事業化はまだ道半ば。高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定も遅れている。原発の建て替えや新増設を政府が認めるかどうかも明確でない。16年度からの電力小売り全面自由化で、地域や業種の垣根を越えた競争が本格化する中でも、原子力事業を安定的に続けるための枠組みづくりが急がれる。

温暖化対策の観点から重要−宮沢経産相


 宮沢洋一経済産業相は11日、九電川内原発1号機の再稼働を受けて記者会見し、「原発の再稼働プロセスが着実に進むことは安全確保を大前提に、エネルギー安全保障、経済性、地球温暖化対策の観点から重要だ。ひいては経済の健全な発展や国民生活の安定に近づく」と期待を示した。

 また宮沢経産相は「事故が万が一起こった時は国が先頭に立ち、原子力災害への迅速な対応が円滑に行われるよう関係法令に基づき責任を持って対処していく」と国が前面に立つ姿勢を強調した。
 

経済界の反応−円滑な通常運転を・震災前の料金水準に


 九電川内原発1号機の再稼働を受け、経済界からは歓迎する声が寄せられている。
 経団連の榊原定征会長は11日「再稼働への大きな一歩が踏み出されたことを歓迎する。円滑に通常運転が開始されるよう準備を着実に進めてほしい」との談話を発表した。日本商工会議所の三村明夫会頭は「日本にとって非常に結構なこと」とした上で、「電力コストの上昇が中小企業の収益改善や地域経済の回復の大きな足かせになっている。電気料金はできるだけ早期に震災前の水準に戻してほしい」と求めた。

 経済同友会の小林喜光代表幹事は「わが国のエネルギー需給構造の再構築に向けた一歩」と評価。「安全が確認された原発の着実な再稼働に向け、審査の効率性向上や体制強化を図るべきだ」と、迅速な審査体制の整備を求めた。

 また、中部経済連合会の三田敏雄会長は「順調な運転が続くのを願う。モノづくり集積地の中部圏は安定・安価なエネルギーの確保が重要課題。他原発も滞りなく手続きが進み、早期に運転再開するのを期待する」とコメントを発表した。
 

地元産業界の声−地域経済の回復に期待


 川内原発1号機の再稼働を受け、九電の瓜生道明社長は「これまで以上に緊張感をもって、安全確保を最優先に今後の工程を慎重に進める」とコメントを発表した。

 産業界からは再稼働を歓迎する声が相次いだ。九州経済連合会の麻生泰会長は「デフレ脱却が視野に入り、経済の回復が目に見えて来ている今、九州経済の回復を軌道に乗せるには、安定かつ廉価な電力の供給が欠かせない」とコメント。さらに「再稼働に至っていない2号機や玄海原発も、定められた手続きを着実に進め、再稼働につなげていただきたい」と求めた。

 地元の川内商工会議所の上村健一専務理事は「地域雇用の安定と地域経済の回復に期待している。2号機の再稼働が控えているので安全最優先で取り組んでほしい」とした。また、フジヤマ(鹿児島市)の藤山和久社長は「電気料金の引き上げの不安が払拭(ふっしょく)されればいい。安全については、当たり前のことをしっかりやっていただきたい」と語った。

 西日本設計工業(北九州市小倉北区)の大道治樹社長は「厳しい新規制基準を乗り越えての再稼働だけに、安全性は高いといえるだろう。電力の安定供給のために全国の原発の再稼働も必要だ」とした。赤司電機(福岡県遠賀町)の間内力社長は「再稼働のための苦労が報われたのではないか」と関係者をねぎらった。

 一方、福岡県の小川洋知事は「電力供給は企業にとって、厳しい国際競争の中で基盤になるもの。(再稼働は)電力の量と質の両面から効果があるのではないか」と期待を寄せた。
日刊工業新聞2015年08月12日 2/4面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
産業界としては「やっと再稼働してくれた」という感じでしょうか。今後、自然エネルギーの割合が増すとは言え、ソーラーパネルをつくるにも電力が必要なわけで、これから日本がどんな産業で“食べて”いき、そのためにどのようなエネルギーがどれだけ必要なのか考える必要があると思います。

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