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ベンチャーと大手企業、新しい連携の形

ちとせバイオエボリューションが受け入れ
ベンチャーと大手企業、新しい連携の形

ちとせバイオの藤田CEO

 ベンチャー企業群を束ねる、ちとせバイオエボリューション(ちとせバイオ、シンガポール)は、設立した子会社2社の社長を三井化学から迎えた。ちとせバイオは新規事業の育成、三井化学はベンチャー経営のスピード感を社員に学ばせる人材育成の狙いがある。ベンチャーは新技術を大企業に提供してきたが、大企業の組織を活性化する役割も期待され始めている。

2社設立


 ちとせバイオは生物の培養技術を持つ「ちとせ研究所」を中核に10社以上のベンチャー企業を束ねる。IHIとは藻を使ったバイオ燃料、三菱商事とは食用藻の事業を展開する。新会社は植物ルネサンスとティエラポニカの2社。ともにちとせバイオの100%出資会社で、ちとせ研究所の拠点(川崎市高津区)に同居する。

 植物ルネサンスは有用でありながらも未利用の植物を探索し、新素材として化粧品、食品、試薬品メーカーなどに販売する。ティエラポニカは水耕栽培でありながら土壌と同じ有機栽培が可能な野菜づくりを提案、指導する事業を展開する。

カンフル剤


 植物ルネサンス社長の秀崎友則氏は「新会社ができると聞いて手を上げたら、社長になることになった」という。ティエラポニカの有富グレディ氏は「一から会社に携われる魅力を感じた」と社長となった経緯を語る。

 三井化学は新事業育成を経験させようと若手社員2人を送り出した。ちとせバイオの藤田朋宏CEOは多くの会社を興した経験から「売上高をゼロから5億円にするまでは個人(創業者)が引っ張る」と語る。三井化学出身の2人にも、ベンチャーが市場で試行錯誤を繰り返し、悪戦苦闘しながら黒字化する段階を体験してもらう。

 多くの大企業はリスクを避けようと初めから黒字化できる新規事業しか立ち上げない。「計画通りの遂行が目的となりがちで、計画の修正が是ではなくなった」(藤田CEO)とも指摘する。組織が大きくなり、画期的な新規事業が生まれにくくなった大企業にとって、ベンチャーがカンフル剤となる。

産業の新陳代謝


 他にもベンチャーの経営感覚を求める大企業がある。栗田工業はロボットベンチャーの連続起業家として知られる加藤崇氏が創業した米フラクタを子会社化した。栗田工業の門田道也社長は「革新的な発想を刺激にしたい」と語る。メタウォーターもベンチャー出資枠10億円を設定した。新技術に加えてベンチャーのスピードや発想力も魅力となれば、大企業とベンチャーの提携が増え、産業の新陳代謝も活発となる。
(文=松木喬)

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日刊工業新聞2019年3月8日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
「初めから100点の事業はない」と、あるスタートアップ企業の方が言っていました。初めから100点を狙うから店頭にある商品をマネます、売れないリスクを減らすために。別の会社の方ですが、新規事業を考えたら上司に「来年度、提案して」と言われたそうです。年度、年度でモノを考えるのもありがちです。

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