18年は7割増…各国中央銀行の金購入が拡大している

世界経済の不確実性の高まりうけ

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 各国の中央銀行が、世界経済の不確実性の高まりを受けて金の購入量を増やしている。最大の買い手であるロシアなどに加えて2018年は新興国が金の購入を拡大し、外貨準備金に占める金の割合を増やしてリスク分散を図っている。さらにニューヨークの金先物市場では、経済の下振れリスクの増加を背景とした米国の利上げ観測の後退も加わって投機筋の買いが入り、1月下旬から価格水準を切り上げている。

不確実性を内包


 金は国の信用リスクを伴わない「無国籍通貨」と呼ばれ、中央銀行はリーマン・ショックや欧州債務危機を契機に10年以降、金を買い越してきた。さらに足元では、米中対立や英国の欧州連合(EU)離脱問題など政治・経済リスクの高まりを受けて金の購入が加速している。

 金の調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によれば、公的機関の18年の金購入量は前年比74%増の651・5トンと、ドル・金の兌換(だかん)制度が廃止された71年以降で最高となった。ドル以外の決済手段を拡大するロシアや人民元の国際化を図る中国が米国債を減らし金を買い増したほか、インドやポーランドなどが購入を本格的に再開した。

 貴金属需給を分析する森田アソシエイツの森田隆大代表は「中央銀行は中長期的に経済の不確実性は低下しないとみているのだろう」とした上で「金購入はしばらく続くのではないか」と指摘する。

投資期待高まる


 さらに年明け以降は、中国や欧州の景気の陰りが投機筋によるニューヨーク市場での金買いにつながっている。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が年始の講演で、景気減速を考慮して利上げを停止する可能性を示唆し、金利のつかない金への投資期待が高まったためだ。

 議長発言を受けてニューヨーク金先物は1月下旬以降、約7カ月ぶりにトロイオンス当たり1300ドル台前半に水準を切り上げた。森田代表は「経済の不確実性の高まりに加え(18年まで)金の上値を抑えていた(利上げやドル高進行などの)要因が弱まり、価格が上に行く力が高まる」と指摘する。

米動向が焦点


 ただ、足元では上昇が一服する動きもみられる。20日に公表された1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨によれば、複数の出席者が経済が想定通り拡大すれば年内の利上げが適切との意見を述べたためだ。

 また、2月に入り米国の対中追加関税の執行が猶予される見通しが高まったことで「この2―3年の高値である1350ドル近辺で頭打ちとなっており、チャート的にも上値が重い状況だ」(住友商事グローバルリサーチの小橋啓シニアアナリスト)との指摘もある。

 当面は政治対立や景気循環による経済リスクの高まりが相場を支えるとみられるが、目先では米国の金融引き締め路線の転換の判断が焦点となりそうだ。

                    

(文=田中明夫)

日刊工業新聞2019年2月26日

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