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福島第一原発廃炉へ、「デブリ接触調査に成功」の意義

比較的単純な動作でも堆積物を回収できる可能性が高いことを確認
福島第一原発廃炉へ、「デブリ接触調査に成功」の意義

燃料デブリと見られる堆積物への初接触に成功(東電提供)

 東京電力による福島第一原子力発電所2号機での燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)と見込まれる堆積物への接触調査では、吸引やすくい上げなど比較的単純な動作でも堆積物を回収できる可能性が高いことが確認された。現在開発中の次の調査装置でもサンプルの回収が見込める。

 「ステップ・バイ・ステップの一歩は踏み出せた」と東電の木元崇宏原子力・立地本部長代理は胸をなで下ろす。原子炉圧力容器を支える円筒状の構造物(ペデスタル)の地下階に釣りざお型ロボを投入した。この調査ロボはさおの先からぶら下がっているため踏ん張りが利かず、指先は700グラムの握力しか出せない。それでも堆積物の一部を剥がしてめくることに成功した。

 そこでは金属質な小石状の物質が積み重なり、その隙間をつなぐように茶色の物質が覆っていた。石垣のように粒とつなぎが混ざり一体となっていた。

 粒と粒の間にはひびなどの隙間があり、小さな力でも剥がすことができた。重りを落とすなど、ある程度の力をかけると塊を砕いて回収できる可能性がみえてきた。次回以降の調査で表面に転がっている小石状の堆積物を拾うだけでなく、少し下の堆積物表層も回収できるかもしれない。

 接触調査ではペデスタル地下階は6カ所、1階は4カ所で堆積物に触れて性状を確かめた。粘土状と目されていた堆積物は、石垣のつなぎに当たる物質が表面を平たんに覆っていた。ロボットで触れてみると表面は硬かった。砂のように細かい物質や泥のように軟らかい物質は、冷却のために注入されている大量の水に流されている可能性がある。

 小石状の物質を中心にバケットをひいてすくい上げたり、吸引で回収するには一つ一つの大きさや推定重量は重要な設計要素となる。日本原子力研究開発機構の野田耕一福島研究開発部門長は「堆積物に初めて触れ、挙動がわかった意義は大きい。触れただけでは動かないものもあり、どう取り出すか新しい課題になる」と評価する。
日刊工業新聞2019年2月19日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
今回の接触調査の範囲はペデスタル床面積の2%程度で、デブリや堆積物の全容を捉えた訳ではありません。デブリ取り出しに向けては堆積物は表層だけでなく、深さ方向の情報も必要です。なにより圧力容器の内部を把握できないと方法を選べないように思います。今回の接触調査では、小さな力でも表面を剥がすことができました。約8年も水を浴びせられてはいますが、次回の調査でフレッシュな断面をサンプリングできるかもしれません。個人的には量をとるなら、叩いて砕いて細かくしてから吸い込むのが楽だとお思います。一方で、取り出し時に壊れた装置や構造物が崩れてデブリ堆積物の上に落ちると、堆積物が砕けて散る可能性があります。デブリ取り出しに向けてがれきを避けて作業空間を確保する際も注意が必要です。流れ出れば汚染水処理系の負荷が上がることになります。

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