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“売る”を究極的に簡単にする、メルカリ流のAI活用論

研究開発組織代表・浜田優貴CPOインタビュー
 活気づくフリーマーケットアプリケーション(応用ソフト)市場でトップを走るメルカリが、目標とする「世界的テックカンパニー」に向け攻勢をかけている。人工知能(AI)を活用し、スマートフォン活用の次を見据えたソリューション開発にも乗り出した。研究開発組織「mercari R4D」代表を務める浜田優貴取締役最高プロダクト責任者(CPO)に展望を聞いた。

 ―メルカリが目指すものは何ですか。
 「売ることを徹底的に簡単にしたい。米アマゾンは電子商取引サイト(EC)で買うことをまるで空気のように、簡単に実行できるようにした。我々は“売る”を空気にする。取り組みの一つとして、スマホのカメラで商品を撮影すると、AIが画像を認識して品名を自動入力し、売れやすい金額を表示するシステムの開発を強化している」

 ―売ることを促進するにはユーザーの所有物を把握する必要があります。
 「スマホ決済サービス『メルペイ』を通じてユーザーの購入情報を押さえる。例えばダウンジャケットを購入した数年後、着なくなっただろうタイミングでメルカリへの出品をお勧めできる。季節変動による売価の変化などをAIが分析し、最も高値で売れるタイミングでアプリに通知する。こういった世界観を目指している」

 ―拡張現実(AR)グラスを使ったシステムを開発した狙いは。
 「売ることを効率化するための成果物の一つで、ARグラスをかけて商品を指すと、想定売価などをレンズの内側に表示する仕組みだ。今後スマホがなくなる可能性もある。我々は(次は)ARグラスに可能性を感じ、開発を進めている」

 ―課題は。
 「メルカリのトップページからの購入率を向上する必要がある。ユーザーがアプリを開いた瞬間に欲しい商品が提示され、わざわざ検索しなくてもそこから購入できる状態を目指す。良質なデータの収集と分析手法の高度化が必要だ」

 ―商品を配送するドライバー不足が深刻です。飛行ロボット(ドローン)の活用は。
 「エネルギー効率が良くない上、運べる商品に限りがある。メルカリに出品された商品の数%しか運べないだろう。人手不足の対応に向け、東京大学などと連携してエネルギー効率が良くて安全に運べるモビリティーの研究を進めている」

【記者の目/フリマ界のアマゾンなるか】
売ることを空気にするため、AIの研究開発を強化して出品作業の効率化を進めてきた。さらなる成長のカギを握るのは、アプリの売上金を多様な店舗で利用できるメルペイだ。購買データを活用してメルカリとの相乗効果を生む狙いだ。メルカリがフリマ界のアマゾンとなるのか。今後を占う試金石となる。
(文=大城蕗子)
日刊工業新聞2019年2月20日

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