英トヨタ工場の部品在庫は“4時間”しか持たない。EU離脱に備え

「何としても合意なき離脱は回避してもらいたい」

サプライチェーンの滞りが懸念されている(トヨタのバーナストン工場)
 英国の欧州連合(EU)からの離脱が3月末に「合意なき離脱」となる懸念が消えず、自動車メーカー各社が対策に動いている。部品サプライヤーを巻き込んで在庫積み増しや生産調整といった準備を進める。ただ合意なき離脱となった場合、収益への悪影響をゼロにすることは難しい。自動車メーカー関係者の緊張感は高まっている。

 トヨタ自動車が英中部に構えるバーナストン工場。1日の完成車生産は600台で、トラック150台が部品を運んでくるが、うち50台は大陸のEU加盟国からのトラックだ。

 英国が合意なき離脱となればドーバー海峡をつなぐ英仏間のトンネルで通関手続きが必要になる。十分な施設がない中、トラックの渋滞は必至でサプライチェーンの滞りが避けられない。

 「部品が一つでも入ってこないと工場は停止せざるを得ない」と友山茂樹トヨタ副社長は明かす。バーナストン工場の部品在庫は4時間分。合意なき離脱に備え「在庫を積み増すしかない」と白柳正義執行役員は話す。また混乱に備え工場の一時休止を検討する。独BMWやホンダも同様の準備を進める。

 部品サプライヤーも対応に動く。パイオラックスは英国工場(ランカシャー州)からEUに輸出する部品をEU地域で積み増し、通関手続きの混乱回避を狙う。また混乱が長期化した場合や顧客が生産を移管した場合は「(欧州内の)提携企業へ生産を一部委託する」(島津幸彦社長)シナリオを想定する。

 ファルテックは欧州地域の統括拠点を英国に構え、生産のほとんどが同国内向け。そのため部品を生産するための材料を英国内で積み増している。

 車体骨格部品を手がける東プレは欧州に生産拠点はないものの、「プラットフォーム(車台)関連の生産事業で提携先があり、影響が出るかもしれない」(内ヶ崎真一郎社長)と間接的な影響に懸念を示す。

 不透明感が増す中、「(英国のEU離脱の影響を)2018年度の通期業績予想に織り込んでいない」(宮本昌俊JVCケンウッド取締役専務執行役員)、「英国工場には投資しづらい」(島津パイオラックス社長)と経営トップからは慎重な声があがる。

 合意なき離脱となれば収益への悪影響は避けられない。米フォード・モーターは最大10億ドル(約1100億円)の減益要因になると試算している。「何としても合意なき離脱は回避してもらいたい」(友山トヨタ副社長)というのが自動車メーカー関係者共通の思いだ。

(文=後藤信之、山岸渉、下氏香菜子、渡辺光太)

日刊工業新聞2019年2月20日掲載

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