中計「未達」相次ぐ製薬業界、試される投資の胆力

グローバル化へ苦闘

 製薬各社が中期経営計画の見直しを余儀なくされたり、目標未達に終わったりする例が相次いでいる。原因は買収した海外企業での問題や、新薬の世界展開の遅れなどで、事業のグローバル化の過程における苦労が垣間見える。国内市場も薬価制度改革の影響で先行きが読みにくく、各社は今後、中計の期間や数値目標をどう設定・開示するかが悩みどころとなる。一方で目先の業績だけにとらわれず、将来を見据えた投資を続けていけるかも試される。

失敗がつきもの


 「技術革新には失敗がつきものだが、大塚ホールディングス(HD)の目利きには課題がある」。UBS証券の関篤史アナリストはこう分析する。

 大塚HDは2018年1―9月期に急性骨髄性白血病薬「SGI―110(開発コード)」について、当初想定していた収益性が見込めなくなったとして約130億円の減損損失を計上した。同剤は13年に米アステックスを買収して得たものだった。

 加えて18年12月期は、米子会社アバニア関連の問題が影を落とした。急性片頭痛薬「オンゼトラ・エクセル」の販売権返還に伴う減損損失や、情動調節障害治療薬「ニューデクスタ」の過去の販促活動に関する米国司法省との和解費用などを計上。11月時点では18年12月期連結決算の営業利益を1270億円と予想していたが、1083億円で着地した。「現時点ではアバニア買収が成功だったとは言い難い」(関アナリスト)。

 協和発酵キリンもグローバル化に向けた苦労をにじませる。19年2月、16―20年の中期経営計画で掲げてきたコア営業利益1000億円の目標達成時期を20年代早期に先送りすると発表した。要因の一つとして、世界戦略品の発売や承認申請の遅れを挙げている。

希望退職者募集


 同社は19年3月、会社発足以来初めて希望退職者を募集する。宮本昌志社長は、中計が未達の見通しになったことと希望退職の募集には「直接の関係はない」とした一方、決断の背景を「グローバル化に向けて大きな変革が必要。国内の状況も中計設定時より厳しいものがある」と話す。

 大塚HDと協和キリンは5カ年の中計を推進してきたが、今後は中計期間の長さや、開示する計数目標の内容が議論になりそうだ。協和キリンの宮本社長が述べた通り、国内は薬価制度の動向が読みにくく、短期間で事業環境が悪化する懸念が拭えない。UBS証券の関アナリストは大塚HDについて、「掲げた目標を達成しない傾向にあり、5年後の数値目標を出しても意味はないように思える」との見方を示す。

 中外製薬は19―21年が対象の中計で、18―21年のコアEPS(1株当たり利益)の伸びを年率1ケタ台後半と予測した。15―18年のコアEPSの成長率は年率17・1%だったため、控えめな目標ともとれる。

慎重な姿勢


 だが小坂達朗社長は「日本市場が非常に厳しい中で妥当な水準だ。ダウンサイドとしては、今後の薬価政策が大きい」と慎重な姿勢を崩さなかった。「単年度の売上高や利益よりは、中外のようにCAGR(年平均成長率)でコミットした方が適切ではないか。海外の製薬会社で中計を出している会社は、ほぼない」(UBS証券の関アナリスト)。

 中計のあり方にかかわらず、長期的な収益源の育成は必須だ。大塚HDの失敗も、この観点で挑戦を続けた結果と言える。経口水利尿薬「サムスカ」など成功例は複数ある。関アナリストも、「新製品は順調に成長している」と評価する。

 「新しいこと(をやる)にはお金と時間と我慢が必要」(大塚HDの樋口達夫社長)。短・中期の業績と、将来に向けた投資のバランスをどう取るか、各社は問われ続ける。

             

(文=斎藤弘和)

日刊工業新聞2019年2月19日

  

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