「年休」義務化、仕事が回らないと焦る企業がやるべきこと
業務量そのものの見直しや再配置も
労働基準法の改正により、4月からすべての企業で、年5日の年次有給休暇(年休)を労働者に取得させることが使用者の義務となる。対象は、年休が10日以上付与される労働者である。罰則つきのこの改正、対策が進んでいるだろうか。
従来、年休は、労働者が請求する時季に与えることとされていた。しかし、2017年の年休取得率は51・1%と、ようやく半分を超えた程度である。
厚生労働省の調査によると、労働者の約3分の2は年休取得にためらいを感じており、その理由としては、「みんなに迷惑がかかると感じるから」「後で多忙になるから」「職場の雰囲気で取得しづらいから」が目立つ。また、やや古いが、労働政策研究・研修機構の11年の調査では、いわゆる正社員の約16%が年休を1日も取得していないという結果も出ている。
ならば強制的に取得させようというのが、今回の改正の意図と言える。すでに就業規則の改定や年休管理簿の作成を進めている企業もあるだろう。しかし、単に「休みを取りましょう」と呼びかけるだけでは、残念ながら状況は変化しないだろう。むしろ、形だけ休んで実際は仕事をしていた、という事態も発生しかねない。
どうしたら義務化に対応できるか。まずは現状把握である。全従業員の年休取得実績を調査し、年5日の年休すら取得できていない者を抽出する。該当者にはその理由を確認し、どこに年休が取りにくい原因があるか探ってみる。
その原因が手続きにあるのなら、年休付与日数や残日数について本人に明確に伝え、計画的に取得するよう促したい。一方、「業務が回らないから休めない」というのであれば(こちらの方がはるかに多いだろう)、普段から主担当者が休んでもある程度の対応ができるように、業務のマニュアル化や情報共有を徹底したい。業務量そのものの見直しも必要であるし、部署によって偏りがあるようなら、再配置を検討すべきだろう。
この先、働き方改革を進めるに当たっては、「誰かが休んでも仕事が回る体制」を作らなければならないだろう。時間の制約なしに働ける人が今後増えるとは思えないからだ。今回の改正を、その仕組みを整える第一歩と捉えたい。
(文=高橋美紀<中小企業診断士>)
従来、年休は、労働者が請求する時季に与えることとされていた。しかし、2017年の年休取得率は51・1%と、ようやく半分を超えた程度である。
厚生労働省の調査によると、労働者の約3分の2は年休取得にためらいを感じており、その理由としては、「みんなに迷惑がかかると感じるから」「後で多忙になるから」「職場の雰囲気で取得しづらいから」が目立つ。また、やや古いが、労働政策研究・研修機構の11年の調査では、いわゆる正社員の約16%が年休を1日も取得していないという結果も出ている。
ならば強制的に取得させようというのが、今回の改正の意図と言える。すでに就業規則の改定や年休管理簿の作成を進めている企業もあるだろう。しかし、単に「休みを取りましょう」と呼びかけるだけでは、残念ながら状況は変化しないだろう。むしろ、形だけ休んで実際は仕事をしていた、という事態も発生しかねない。
どうしたら義務化に対応できるか。まずは現状把握である。全従業員の年休取得実績を調査し、年5日の年休すら取得できていない者を抽出する。該当者にはその理由を確認し、どこに年休が取りにくい原因があるか探ってみる。
その原因が手続きにあるのなら、年休付与日数や残日数について本人に明確に伝え、計画的に取得するよう促したい。一方、「業務が回らないから休めない」というのであれば(こちらの方がはるかに多いだろう)、普段から主担当者が休んでもある程度の対応ができるように、業務のマニュアル化や情報共有を徹底したい。業務量そのものの見直しも必要であるし、部署によって偏りがあるようなら、再配置を検討すべきだろう。
この先、働き方改革を進めるに当たっては、「誰かが休んでも仕事が回る体制」を作らなければならないだろう。時間の制約なしに働ける人が今後増えるとは思えないからだ。今回の改正を、その仕組みを整える第一歩と捉えたい。
(文=高橋美紀<中小企業診断士>)
日刊工業新聞2019年2月5日