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地方大学の中で際立つ存在感、「北九州」の生きる道

九州工業大学がロボット研究で成果
地方大学の中で際立つ存在感、「北九州」の生きる道

部品搬送システムの構築した九州工業大学の戸畑キャンパス

 北九州市に本拠を置く九州工業大学が、ロボットの研究開発で成果を上げている。安川電機やデンソーといったグローバル企業との連携を進めるほか、学生プロジェクトでは多くの世界大会で上位入賞を果たした。得意分野に特化した教育研究が奏功した。少子化で定員不足や整理統合に危機感を抱く地方大学の中で、存在感が際立つ。

 九工大、デンソー、KDDI、国際電気通信基礎技術研究所(京都府精華町)の4者は、高速・大容量の第5世代通信(5G)技術を使って産業用ロボットを制御する実証実験を戸畑キャンパス内で始めた。5Gの無線技術を使ったロボット制御の実証実験は世界初の試みだという。2月18日からは実証の場をデンソー九州(北九州市八幡西区)に移して、より現場レベルでの実験を続ける。

 一方、産業用ロボット最大手の安川電機とも連携し人材育成や技術研究に取り組む。2020年開設予定の安川テクノロジーセンタ(仮)内のオープンラボで自立作業ロボットの応用研究が計画されている。企業内にラボを置くことで世界レベルの学生や研究者が招聘(しょうへい)でき、先進的な製品開発を志向する。

 これらの取り組みは既に花開きつつある。学生らによるホームサービスロボットの開発チームは昨年10月の「ワールドロボットサミット(WRS)」サービス部門で優勝、経済産業大臣賞を受賞した。また水中ロボットやサッカーロボットも国際大会で入賞を果たすなど、取り組みは世界に知られ始めている。

 九工大がロボットに熱心に取り組むのは、産業界の発展に尽くすとの自負があると同時に、独自分野で地方創生に貢献したいとの強い思いがある。尾家祐二学長は「情報が自由に取得できるようになった現代において、大学がこの地にある意義を考える必要がある。北九州に行くことで最新技術が学べる、研究できる強みを発信することで有為な人材を確保する」と話す。

 少子化が加速する地方と、そこにある大学が生き残るために何をすべきか。九工大の取り組みは示唆に富む。
日刊工業新聞2019年2月13日

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