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売上高2兆円?急成長を戒める村田製作所社長

村田製作所会長兼社長・村田恒夫氏インタビュー
 ―実用化が迫る次世代通信の5Gなど通信分野の見通しは。
 「5Gで使う(大きな情報量を伝送できる高周波数帯である)『ミリ波』などに合わせた回路需要が高まる。表面弾性波(SAW)フィルターはミリ波などの領域では使えない。ただ4Gにおいてモジュール(複合部品)にして小型化する方向で需要が増える。同フィルターも年率5%の増産を図る」

 ―“米中ハイテク戦争”を受け、国内でも情報通信機器から中国製品を実質的に排除する動きが出てます。
 「5Gの基地局関係では影響がある。ただ中国メーカーが除外されても、他国メーカーの製品が導入されるということになる。そちらに需要が出るので、そこまで大きな影響は起きないだろう」

 ―電池事業の2―3年後の黒字化が見えてきました。
 「リチウムイオン二次電池において、スマートフォンに供給するラミネート型の拡大はコスト的に厳しい。当社の技術を生かせる領域に照準を合わせたい。むしろ電動工具向けの円筒型の方が、年率15%の成長ができそうだ。当分は円筒型に軸足を移す」

 ―積層セラミックコンデンサー(MLCC)では増産をスムーズにするため、車メーカーに納入品の小型化を求めています。
 「すぐにできないが、(車載用MLCCで)徐々に小型化へシフトする計画を顧客に立ててもらっている。それが進めば、当社の供給能力も上がる。現在の車向けで主流の大きさは、スマホ向けより2サイズほど上の1・6ミリ×0・8ミリメートル。それに対し0・6ミリ×0・3ミリメートルぐらいまで小型化が進んでほしい」

 ―4月から始まる3カ年の新中期経営計画では、2021年度に売上高2兆円を目指します。
 「“2兆円”だけが一人歩きしている。あくまで結果目標だ。この3年ほどは(MLCCの需要増などで)急激に成長したが、本来のありたい伸び方ではなかった。製品の需要見通しはもう少しシステマテックに立てられるようにする。中計の期間で経営基盤を見直して、健全な成長を目指したい」

【記者の目/IoT化に合わせ新事業創出】
 車載向け電子部品の需要は引き続き堅調な同社。5G普及を控えた通信と車の両市場で、さらなる収益拡大を図っていく。同時に21年度までの新中計期間では次代の成長に向けた種まきも進める。焦点を当てるのはエネルギーや医療・健康といった分野だ。IoT(モノのインターネット)化の動きに合わせて新規事業をどう展開するか注目される。
(聞き手=京都・日下宗大)

村田製作所会長兼社長・村田恒夫氏
日刊工業新聞2019年2月5日掲載

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