ニュースイッチ

ホンダ「ASIMO」じゃないロボットが大活躍!

自動化で生産技術をリードする「OGAWA」と「YORII」の工場の中身とは?
ホンダ「ASIMO」じゃないロボットが大活躍!

オイルポンプの取り付けにロボットを導入した(小川工場)


工場の自動化率は世界トップクラス


 13年7月に稼働した寄居工場。小型車の生産に特化し、現在は「フィット」「ヴェゼル」「グレイス」「シャトル」の4車種を手がける。溶接工程と塗装工程は、仕上げや検査などの一部を除いてほぼ自動化。人手による作業が比較的多い組み立て工程も、重量物の搬送などでロボットを積極活用しており「自動化率は世界トップクラス」と河野丈洋工場長は話す。

 溶接工程では、フロントドアのアウターパネルとインナーパネルを張り合わせる作業でロボットを活用した新工法「ローラーヘム」を導入した。パネルの周囲を折り曲げて接合するヘミング加工を4台のロボットが担当。ロボットの先端にローラーを取り付け、パネルの周囲をなぞるようにして折り曲げていく。

 従来、ヘミング加工は専用のプレス機で行っており、上型と下型の一対の金型を用意する必要があった。これに対しローラーヘムは下型の上にパネルを設置し、その周囲をローラーで曲げるため、上型が必要なく、新機種生産にかかる金型投資を半減できる。パネルの各辺を4台のロボットが分担して曲げ加工することで生産性を高め、プレス機と同等の加工時間を実現した。

 一方、組み立て工程ではインストルメントパネル(インパネ)を車内に搭載する作業をロボットで自動化した。導入したのは安全柵が必要ない「協調ロボット」。60キロ―70キログラムほどの重量のインパネを同ロボが運び、車内の所定の位置に精度良く装着する。

 従来は重量物の搬送を支援するアシスト機を使い、人手でインパネを搭載していた。こうした作業を自動化する場合、通常は安全柵の設置などにより車体2―3台分のスペースを確保する必要がある。寄居のインパネ搭載ロボは柵なしのため、車体1台分のスペースで自動化を実現した。柵なしの協調ロボは、ほかにシートの搭載工程でも活躍。寄居工場全体のレイアウトのコンパクト化に寄与している。

日刊工業新聞2015年08月04日 深層断面
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
日本の拠点には自動化技術を開発して試験導入し、成果が出れば海外生産拠点へ横展開するという役割が求められることが多い。合わせて生産の自動化で「コストが高いから日本では生産できない」ということが減れば、より多様な戦略が生まれて日本の製造業が活性化しそうだ。将来は自動車工場も半導体工場のようにほとんど無人で稼働するなんてことがあるのだろうか。

編集部のおすすめ