名門・曙ブレーキが私的整理。鬼門の米国事業は立て直せるか

09年に独ボッシュから事業買収

 曙ブレーキ工業が事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を利用した金融支援の申請に踏み切った。生産の混乱などで米国事業の不振が続き経営を圧迫していたためで、ADRや企業などからの支援を生かして早期に財政基盤を整える。新たなブレーキ製品の提案もてこに事業計画をまとめ、4月からの新たな中期経営計画の策定に臨む。

 「日本から指導する技術者をかなり送りこんできたが、まだ足りていない」。信元久隆社長は米国事業の難しさをこう示していた。曙ブレーキは車のブレーキの摩擦材を中心にブレーキ製品を手がけているが、ADRを申請するまで財務体質が悪化した要因は、同社の売上高の約半分(19年3月期見通し)を占める米国での不振が大きい。

 08年のリーマン・ショック以降、米国経済が回復すると急な増産要求から休日稼働を余儀なくされ、設備負荷が増大して故障に陥るなどで採算が悪化していった。

 労務費の増加や人材の採用難なども重なり、生産の混乱が主要取引先であるゼネラル・モーターズ(GM)の次期モデルでブレーキ製品の失注につながった。18年9月末に1083億円あった有利子負債の返済計画が不透明になる事態まで落ち込んだ。

 今後は企業などに支援を要請していくとみられ、曙ブレーキも「企業からさまざま提案がありうる」と再建に前向きだ。

 米国事業の立て直しに向けた施策も徐々に進めている。品目計算などのグローバルデータベースを米国事業のコスト改善に生かすほか、ブレーキの新技術「新構造ブレーキキャリパー」を既存ブレーキに応用し、費用対効果の高いブレーキ製品を米国でも生産して提案力を強化する。

 曙ブレーキは複数回の債権者会議を経て、事業再生計画を策定する。自動車業界は大きな変革を迎え、ブレーキ製品にも次世代対応が待ったなしの状況でもある。時代に対応した経営が進められるかの正念場を迎えている。

(文=山岸渉)

日刊工業新聞2019年1月31日掲載

梶原 洵子

梶原 洵子
01月31日
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曙ブレーキは、業界団体トップを務めたこともある名門企業です。リーマン・ショック後の09年に独ボッシュの北米ブレーキ事業を買収。2社を合わせた上で過剰生産能力の最適化を図った一方、事業買収で販売先や調達先は大幅に拡大しました。過去約10年間のインタビュー記事を見ると、多くで北米が課題と言及しています。再度、増産投資も行っていたようで、北米自動車生産の大きな変動に対応しきれていなかった印象があります。

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