逆風の電力大手が進める顧客の懐に入り込む戦略

装置メーカーとの生産性の高い設備の共同開発など

 人口減少社会に差し掛かり、日本の電力需要は頭打ち。市場自由化で競争も激しさを増す。こうした状況の下、電力大手が単なる省エネルギー機器の導入提案にとどまらず、装置メーカーと生産性の高い設備を共同開発したり、客先でユーティリティー設備を設置・運営したりするケースが出始めている。エネルギー大競争時代を迎え、顧客の懐に入り込んでウィン―ウィンの関係を築く戦略だ。

 中部電力は加熱時間を大幅に短縮できる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)急速加熱装置を豊電子工業(愛知県刈谷市)と共同開発し、2017年にトヨタ自動車へ納入した。過熱水蒸気と電気ヒーターを組み合わせたハイブリッド加熱方式で、従来の遠赤外線ヒーターによる雰囲気加熱方式に比べエネルギー使用量を77%、加熱時間を69%短縮し、省エネ性と生産性向上を同時達成した。

 トヨタは燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」で、CFRPを使っているフロア部分の保護部品成形前の加熱工程に導入。中部電は豊電子とともに、トヨタが商品力向上に大きな成果を上げた仕入れ先を選定する「技術開発賞」を電力会社として18年に初受賞したほか、トヨタを含めた3社で18年度「省エネ大賞」(省エネルギーセンター主催)の最高位となる経済産業大臣賞(省エネ事例部門)を受賞している。

 一方、東京電力エナジーパートナー(東電EP)の省エネルギーサービス(ESCO)事業子会社である日本ファシリティ・ソリューション(東京都品川区)は18年夏、SUBARU(スバル)群馬製作所矢島工場(群馬県太田市)の塗装ラインで、温熱・冷熱・圧縮空気を一括供給するサービスを始めた。昇温・冷却を繰り返す塗装は、自動車の最終組立工場で最もエネルギー消費が大きい工程。自動車塗装工程でのユーティリティーサービス一括導入は国内初の事例になるという。

 従来の塗装工程はボイラや冷凍機、コンプレッサーが独立した形で温冷熱とエアを供給していた。それに代わり、日本ファシリティが熱回収ヒートポンプ、ターボ冷凍機の排熱も活用する蒸気レスの温水システムを設置。塗装ラインに必要なユーティリティーを効率良く作りだしている。また、群馬製作所大泉工場(同大泉町)では出力5000キロワットの太陽光発電設備の建設を進めており、同工場で使われる電力の一部をまかなう計画だ。
(文=青柳一弘)

日刊工業新聞2019年1月30日

  

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