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深刻化する後継者不足、1番の問題は?

連載・事業承継指南(1)
 世代交代期を迎えた経営者の約半数が後継者不在と言われる中、親族外承継を含め円滑な事業承継が求められている。中小企業の喫緊の経営課題である事業承継問題のポイントについて解説する。(4回連載)

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 事業承継の課題の種類には大きく分けて、「事業そのものの課題」「事業を託す相手の課題(誰に託すか)」「事業を託す相手により個々に生じる課題(税務・法務・資金調達等)」の三つある。課題の中で最も重要で後継者に承継する上で時間を要する「事業そのものの課題」について説明したい。

 親族内承継や従業員承継など、いわゆる内部承継においては「譲り受ける事業」についての確認・検証という作業(事業デューデリジェンス)が、ほとんど取り組まれることがない。背景には「あうんの呼吸」「以心伝心」で伝わるものと誤解している方が非常に多いことがあるようだ。

 現経営者と後継者(候補)が一緒になって自社の事業を振り返る。そのための事業についての「対話」を通じた認識共有が重要だ。財務諸表(貸借対照表)に表れない、目に見えにくい魅力(知的資産)、「なぜお客さまに選ばれているのか」「どのような思いをもって、どのような仕組みや工夫でお客さまに選ばれる製品・商品・サービスを生み出しているのか」などについての「対話」だ。

 「創業者はなぜこの事業をはじめたのか」「過去の大変な時期をどのように乗り越えたのか」「事業が軌道に乗ったきっかけ」「競合他社との差別化」「顧客のニーズの変化」など「対話の視点」を使って、現経営者と後継者とが一緒になって、自らに問いかけながら、振り返ってみよう。(金曜日に掲載)

◇ 中小企業基盤整備機構 事業承継・引継ぎ支援センター 事業承継コーディネーター 大山雅己
日刊工業新聞2019年1月25日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
「事業承継指南」は4週に渡って連載いたします。次回の掲載は2月1日の予定です。

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