蒸気の減衰を食い止めろ!地熱発電で国内初の長期実証へ

柳津西山地熱発電所で涵養技術の確立目指す

 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は柳津西山地熱発電所(福島県柳津町)で、付近の川の水を還元井に注入して地熱貯留層からの蒸気量を増やす「涵養(かんよう)技術」で出力回復を目指す長期間の実証を2019年度から2年間の計画で始める。同発電所の出力は運転を開始した95年の半分以下に減衰しており、13年からJOGMECなどが涵養事業を開始。短期間の実証で効果を得たため、国内初の長期実証を始める。

 柳津西山地熱発電所は奥会津地熱(福島県柳津町)が熱供給者、東北電力が発電事業者として運営している。単機ユニットの出力が6万5000キロワットと国内最大だったが、95年の運転開始から約10年後には出力が4万5000キロワットに減衰。現在は東北電力が3万キロワットに出力を調整して電力を供給している。

 JOGMECは13年から奥会津地熱、地熱技術開発(東京都中央区)などと蒸気量や出力の回復を目指して涵養事業に着手。付近の只見川水系の水を還元井から地下へ流し、地熱貯留層からの蒸気量を増やす実証を合計4カ月間実施した。

 この結果、地熱が2000メートル程度の深い層から1600メートル程度の浅い層へと流れていることが分かり、2000メートル付近の割れ目が発達した地熱層に河川水を注入するなどしてきた。

 一つの井戸で蒸気が1時間当たり14トンから20トンに増えるなどのデータを得た。ただ、長期的に安定して効果が維持できるかが課題で、延長事業として19年度から2年間の長期実証を行う。

 長期実証では涵養井を2100メートルの深さに改修し、河川水を注入して蒸気が安定して増加するかを連続運転で確かめる。本年度は地熱貯留層のシミュレーションも行い、これによって19年度に長期の注水を効果的に行う予備検証も進めている。

 JOGMECでは「このエリアは地熱は十分あり、効果を期待している」という。奥会津地熱の生産井は17本、還元井は2本で、今回の涵養の長期実証により現在の3万キロワット(設備利用率80―90%)が安定維持できるように減衰に歯止めをかけることを優先しながら、出力回復を目指す。

  国内の地熱発電所は40カ所、合計出力は約50万キロワットとピーク時を下回っている。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度導入以降、バイナリー発電が20数カ所(合計2万キロワット)動き出したが、全体で減少しているのは既設大型地熱発電所の減衰が影響している。

 世界最大の地熱発電地域である米カリフォルニア州のガイザーズ地区は、地熱井戸の乱立もあり蒸気量が減衰。327本の生産井に還元井を通じて生活排水などの処理水を注入し、蒸気が復活して出力も回復している。
(文=いわき・駒橋徐)

日刊工業新聞2019年1月10日

江原 央樹

江原 央樹
01月20日
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 環境省の「平成22年度 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書」によると、日本における熱水資源開発の賦存量は150℃以上では2,400万kW、120℃~150℃では110万kW、53~120℃では850万kWと推計されているが、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によれば、既設の全国の地熱発電所の発電出力合計は約52万kwにとどまっている。理由は、地質調査や建設まで多大な費用と時間がかかるうえに、資源が保全のために規制された国立・国定公園内に存在したり、温泉街に近い場合も多く温泉の湯量や温度への影響などへの懸念から地域の同意が得られないなどが挙げられる。
 今回の記事では、実際に運営されている発電所における蒸気の減衰への対策の実証ということであるが、発電出力の維持という面だけではなく、地域の温泉資源の維持にもプラスの影響が生まれることになれば、地域共生や活性化にもつながり新規建設にも弾みがつく。ぜひ、そのような観点でも検証されることを期待したい。

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