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経営理念はSDGs、静岡の新信金「融資に“インパクト”考慮」

21日に発足する浜松いわた信用金庫
 浜松、磐田両信用金庫が合併し、「浜松いわた信用金庫」が21日に発足する。新信金は「持続可能な開発目標(SDGs)」を経営理念に掲げ、融資にも生かす。新信金の理事長に就任する御室健一郎浜松信用金庫理事長に、合併の狙いや目指す姿を聞いた。

 ―合併の経緯は。
 「浜松信金、磐田信金はともにモノづくり産業が集積する静岡県西部地域を営業基盤とする。当地域は自動車やバイク、楽器、光技術など高度な産業技術を生みだしてきた。しかし近年は世界規模での技術開発競争や生産拠点の国内外流出など課題を抱え、両信金は共通の危機意識を持っていた」

 「今後、お客さまの利便性向上と地域貢献の発展にさらに貢献するためにどうあるべきかと考えた時、ごく自然な流れで合併の話に至った」

 ―新信金の特色は。
 「国際社会の共通目標として採択されたSDGsを経営理念に掲げる。新設のSDGs推進部で融資する際、リスク、リターンなどの事業性だけでなく、環境への配慮や地域への貢献、女性の活躍など“インパクト”を考慮するような仕組みを考えていく」

 ―店舗網の再編は。
 「当面は両信金の店舗計92店を維持するが、顧客の利便性やサービスの質向上を調査した上で合理的な体制を検討したい。早期に合併効果を発揮するため、店舗体制の再構築を推進する専任チームを設けた」

 ―合併による相乗効果をどう地域支援に生かしますか。
 「当地域の課題である人口減少、後継者難、輸送関連機器業界のEV化対応はそれぞれ密接な関連がある。M&A(合併・買収)や事業承継は基幹産業である製造業の大きな課題。またEVシフトが進むと、県西部の産業構造が激変する可能性がある。こうした問題にハード、ソフト両面から新たな産業構築に向けた取り組みを進める必要がある。両信金の職員は計約2000人。合併による業務の効率化で、約200人を戦略分野に投入できる。合併の最大の狙いはそこにある」

 ―将来目指す姿は。
 「新たに誕生する浜松いわた信用金庫では、これまでのカスタマーバリューからユニバーサルバリューへの価値改革に挑戦する。そのためのシステムと人材育成の投資は惜しまない。金融ノウハウや多様な人材の専門性、外部知見をフル活用し、ゆりかごから墓場までお客さまが何でも相談でき、地域に圧倒的に信頼される総合サービス業への発展を目指したい」

【記者の目/地域支援、大局見据える】
 静岡県で預金高トップの浜松信金と同4位の磐田信金の健全性の高い信金同士の合併となる。合併後の預金高は2兆3702億円で全国で10位前後の規模。どんな合併も融和は容易ではないが、御室新理事長は「互いの夢と地域に対する思いは同じ」と大局を見据える。SDGsの理念を具体的にどう融資に落とし込むかにも注目したい。

(文=浜松支局長・田中弥生)

浜松いわた信金理事長に就任する御室健一郎氏

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日刊工業新聞2019年1月9日掲載

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