ロボットにできない仕事は何?人の仕事はどのように変わる?

仕事に家庭にロボットが大活躍

 「24時間戦えますか」。猛烈な仕事ぶりを歌ったCMソングがヒットしてから30年。2018年の通常国会では、残業時間の上限を月100時間とする働き方改革関連法が成立した。人工知能(AI)、ロボットの導入も進み、職場は大きく変わりつつある。未来の私たちはどんな仕事をしているのか。そのヒントとなる新たな動きを追った。

職場にRPA ストレス減・定時退社


          

 あなたのオフィスにもロボットがいるかもしれない、と言われたら驚くだろうか。「RPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)」。企業への導入が進んでおり、機械の手足こそないが、パソコンの中で人間に代わりデータの確認や書類作成といったルーチンワークをこなす。

 オフィス向け不動産会社のボルテックス(東京都千代田区)は18年から、顧客向けの明細書の作成業務にRPAを導入。金額を確認して書類を作成し、出力するという単純業務だが、作業時間が月100時間近く短縮された。担当者は「社員のストレスが減り、定時で帰れるようになった」と話す。

 システムを開発したビッグツリーテクノロジー&コンサルティング(同港区)の湯川政延執行役員は「RPAの導入で削減できた時間で、人間を相手にした仕事を増やせるようになる」と指摘。導入は大手金融機関などが多いが、今後中小企業や地方にも広がっていくとみている。

 民間調査会社のアイ・ティ・アールの予測によると、RPAの国内市場規模は17年度の35億円から、22年度には400億円に拡大。舘野真人取締役は「人手不足に加え、働き方改革で残業規制が入ったことも大きい」と指摘する。

どこでもロボ お片付けロボシステム


CEATECで講演する西川徹PFN社長

 ロボによる仕事の代替は職場にとどまらない。18年のIT見本市「CEATEC JAPAN(シーテックジャパン)」で大きな注目を集めたのは、プリファードネットワークス(PFN、東京都千代田区)の「お片付けロボットシステム」だ。PFNが開発したAIを搭載したロボが、床に落ちている物を判別し、アームでつかんで棚など所定の場所に戻す。声で指示を出すこともできる。

 PFNの西川徹社長は「さまざまな仕事をこなすロボットの世界がやって来る」と予言。かつて工場や研究所だけで使われていたコンピューターは、今やどこの会社や家庭にもある。ロボでもそんな時代が来るかもしれない。

機能絞り自動化 人は隙間作業担当


 AIやロボの発達に伴い、人間が仕事を奪われるという「脅威論」は根強い。だが、雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏は「今後15年程度では雇用に与えるインパクトは大きくない」と話す。人口減少や高齢化で労働力が不足する上、機械にできることには限界があるためだ。

 例えばすし職人。魚の種類に応じてさばき、調理し、食器を洗い、カウンターで接客も行う。こうした複数の仕事をすべてこなせるAIやロボの登場にはまだ時間がかかる。当面は「機能を絞って自動化し、それらの隙間作業を人間が請け負うようになる」という。

 「仕事のやり方が変わる」。PFNの丸山宏PFNフェローはこう語り、仕事そのものが大きく変化すると見込む。漁師が捕った魚をAIが自動的に識別し、港に戻るまでの間に販売を決めている。そんな状況が生まれるかもしれない。

 56年に労働省(当時、現厚生労働省)が作成した「職業ハンドブック」を見ると、炭鉱労働者や繰糸工など、今ではほとんど見られない仕事が並ぶ。多くは時代の変化や技術の進歩で機械に置き換わった。

 ヤフーの安宅和人最高戦略責任者(CSO)は「何かの新しい産業を解き放つ兆候だ」とみる。情報の識別や予測といった仕事が自動化され、時間が浮く。そこで新しい事業を始めたり、投資に振り向けたりする。人にしかできないこととは何か。これまで以上に問われている。

日刊工業新聞2019年1月9日

  

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