景気減速の中国、川重社長「インフラ投資が増え油圧機器供給が追い付かない」

川崎重工業社長・金花芳則氏インタビュー「鉄道車両部門は復活するとみている」

  ―今春、次期中期経営計画を発表します。
 「現中計(2016―18年度)は目標を達成できずに失敗だった。各カンパニーの計画策定段階で本社の関与が足りなかった。全事業部門で投下資本利益率(ROIC)8%を掲げてきたが、果たしてそれだけで良いのか。(投下資金の回収期間を示す)キャッシュコンバージョンサイクルや製品利益率など新たな重要業績評価指標(KPI)を設定するつもりだ。また、人事評価制度を含め、組織風土改革にも取り組みたい」

 ―米中貿易摩擦の影響は。
 「米国製4輪バギーの鉄鋼やアルミニウムに影響が出ているが、むしろ景気減速を受けて中国がインフラ投資を増やしており、建設機械向けの油圧機器供給が追い付かない。プラスに効く部分もある。中国・江蘇省蘇州市やインドの油圧機器工場を増強する」

 ―巨額損失を計上した鉄道車両事業を抜本改革します。
 「兵庫工場(神戸市兵庫区)を視察したが、新幹線の台車亀裂問題の再発防止策で掲げた生産管理システム『KPS』が根付いてきた。一部作業工数では2割程度削減を達成した。5年、10年先を見据え兵庫工場の固定費を賄えるだけの受注を国内で確保し、ROIC8%超をクリアできる絵を描けるかどうか。結論を出すのは時期尚早だが、車両部門は復活するとみている」

 ―今後の全社設備投資の考え方は。
 「米ボーイングの大型機『777X』向けの投資が一段落した。高水準が続いてきたが、次期中計ではフリーキャッシュフローを生み出せる範囲内に抑え、不要不急なものは止める。航空機用エンジンも設備投資が大きく膨らむことはない」

 ―シスメックスと共同出資するメディカロイド(神戸市中央区)で手術支援ロボットの開発を進めています。
 「(米インテュイティブサージカルの手術ロボット)『ダヴィンチ』の特許が切れる19年半ば以降の市場投入を目指し、薬事申請する計画だ。最大市場は米国。米国食品医薬品局(FDA)にも申請し、取得でき次第投入する」

 ―造船事業再建の焦点は液化天然ガス(LNG)運搬船です。
 「(自国政府支援を受ける)韓国造船所に引きずられ、船価が(構造改革会議で決めた)利益率を確保できる水準に戻っていない。我々としては4隻を受注した場合、1隻目を坂出工場(香川県坂出市)で建造し、残る3隻を中国の合弁造船所で手がけ、平均値で韓国を上回るシナリオだ。中国の合弁工場は素晴らしい。赤字覚悟で受注を取るかどうか。(坂出の受注残が底を尽きる)近々、その決断をしなければならない」

【記者の目】
 自社の組織風土をアンケートしたところ「言われたことを黙々とやる社員の集団」との結果が出た。金花社長は「新しいことをやろうと言われた途端、戸惑う社員が多い。変化の激しい時代に対応できないのではないか」と危機感を感じ、昨年4月からの部長、課長級との対話で意識改革の重要性を訴えてきた。川重にとって19年は人づくり革命元年になりそうだ。
(聞き手=鈴木真央)
                   

日刊工業新聞2019年1月8日掲載

梶原 洵子

梶原 洵子
01月08日
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新年はいろいろな企業の経営幹部の方とお会いする機会が多いのですが、機械以外の業界でも、中国については政府の景気刺激策を予想し、気になるものの、そこまで心配していないと語る人が少なくなかったです。

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