横浜から世界へ、中小企業の医療分野進出は総力戦で挑む

産学官金連携のプラットフォーム「LIP.横浜」の役割とは

 横浜発の医療機器が世界に広がろうとしている。健康・医療分野のイノベーション創出を目的にした産学官金の連携するプラットフォーム「LIP.(リップ)横浜」が、中小製造業の医療機器の研究開発や連携先の開拓、販路拡大を後押しする。1社単独では難しい医療分野の進出を総力戦で支える。

ニットー、「装着型いす」製品化


 リップ横浜は2016年に発足。健康・医療分野のイノベーションを目指す企業や大学、研究機関のネットワークが革新的なプロジェクトを生み出すことで、中小製造業やベンチャー企業などの新技術や新製品の研究開発を推進する。

 横浜市には理化学研究所横浜キャンパス(横浜市鶴見区)をはじめ、26大学180もの研究機関が集積し、ライフサイエンスに関わる製造業などを合わせれば9000社に上る。自動車部品製造など、高度な技術力を有した製造業がこれら研究機関と共存しているのも特徴だ。一方、中小製造業が1社単独で医療分野に進出するのは許認可の問題や製造販売の面でハードルが高い。リップ横浜として中小製造業の医療分野の参入を後押ししている。

 リップ横浜の支援を受け医療分野への進出を果たした中小製造業が誕生した。金属加工業のニットー(横浜市金沢区、藤沢秀行社長、045・772・1371)は、装着型姿勢固定具「archelis(アルケリス)」を開発、医療機関向けにレンタルでの運用を開始した。

 オリンパスメディカルサイエンス販売(東京都新宿区)とジンマー・バイオメット(同港区)が全国で営業展開する。他業界への供給拡大やジンマー・バイオメットのネットワークを生かした海外進出も視野に入れる。

シンクランド、欧州で無痛針手応え


シンクランドはコンパメッドでマイクロニードル(下)の試作品を初公開

 横浜市と横浜企業経営支援財団(IDEC)は、リップ横浜の支援活動を通じて、18年11月にドイツ・デュッセルドルフで開催した世界最大の医療技術見本市「コンパメッド」に、単独となる横浜パビリオンを2年連続で出展した。市内の中堅・中小企業5社が世界の医療機器メーカーを相手に技術力をアピールした。

 コンパメッドでは毎回、同じ場所での出展が原則。そのため前回からの研究開発の進捗(しんちょく)を、継続的な関係性を維持しながら報告、説明しやすい。シンクランド(横浜市鶴見区、宮地邦男社長、045・633・4082)は、肌に刺しても痛みを感じない微細な注射針「マイクロニードル」の試作品を初公開した。

 光渦レーザー加工技術を使い、直径100マイクロ×長さ400マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の微細な無痛針の実物を、メーカー担当者に説明した。及川陽一取締役最高技術責任者(CTO)は「前回はコンセプトを示すだけだったが、実物を展示できたのはインパクトがあった」との手応えだ。

横浜ネプロス、化学研磨技術の需要探る


横浜ネプロスは国内の加工実績をコンパメッドで展示。出展は欧州の市場調査の目的も

 コンパメッドの出展は欧州を含め海外のマーケティング調査の意味合いも大きい。横浜ネプロス(横浜市旭区、林信一朗社長、045・954・3221)は、医療用注射針や縫合針、電子部品などの機械研磨や電解研磨では難しいバリ取りや表面光沢仕上げの加工実績を示した。化学研磨は昔からある技術だが、林社長は「欧州ではあまり認知度がないステンレスの化学研磨を知ってもらうだけでも現地の展示会に出るメリットがある」と話す。横浜ネプロスは120近くの商談を通じて名刺交換やテスト要望、見積もりの提出につなげた。

 海外展開を加速させるには言葉の壁を取り除く必要がある。横浜市は欧州の活動拠点として独フランクフルト事務所を97年に開設しており、外国語が話せる常駐職員が欧州企業との橋渡し役になる。さらに横浜市とIDECはメールなどのやりとりや進捗管理、契約など人数の少ない中小企業が苦手とする事務作業などをきめ細かくサポートし、医療分野の進出を後押しする。
(文=横浜・松崎裕)

日刊工業新聞2019年1月4日

  

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