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イオンと提携を解消した三菱商事、社長が語る商社の生き方

 イオンは28日、筆頭株主である三菱商事との包括業務提携を解消すると発表した。両社は2008年12月に提携し、三菱商事はイオンの発行済み株式の5%強を取得した。三菱商事が28日までにイオンの保有株を売却した結果、三菱商事によるイオン株の持ち分は、発行済み株式数の4・6%から2・34%に半減した。提携から10年を経て、包括業務提携を継続する意義がなくなったと判断した。

 両社は通販や衣料品専門店で合弁事業を展開するなど協業していたが、近年はイオンが独自で事業展開するなど、関係が薄まっていた。イオンは提携当初、商事の国際調達網を活用した流通の合理化や商品開発、金融、IT分野での相乗効果を視野に入れていた。協業では一定の成果が上がったとみて、包括的な協業関係は解消する。

日刊工業新聞2018年12月28日



垣内威彦社長インタビュー


 ―2019年の景気をどう見通しますか。
 「米中(貿易摩擦)の問題が顕在化しているが、貿易のアンバランスは論点ではない。そういう意味で心理的には抱えている材料が非常に難しい、しかも解決には時間のかかるテーマではあるが、経済実態として米国は安定していると思う。中国が少し下ぶれるかも知れないが、結論的には19年が悪いとは思っていない」

 ―19年度からの次期中期経営計画で人事制度改革などを盛り込んだ背景は。
 「現在起きている変化はおおむね、デジタル化の浸透によってビジネスモデルがどんどん変わっていくということと、上流や横の業界との融合といったことが大きく出てきた」
 
「既存の組織のままでは融合型のビジネスモデルに対応できないし、人材が“たこつぼ化”してしまい自分の経験した部分しか知らないと言うのでは構想力が出てこない。縦の壁を取り払い、それぞれのグループを融合して新しいビジネスモデルにチャレンジし、それに対応できる人材を育成しようというのがテーマだ」

 ―若手の経営人材への登用とトレードなど伝統的商売とのバランスをどう考えますか。
 「商売が好きでトレードが好きだという人ほど、極めて経営者人材にシフトして成功するケースが多い。商売が上手だということは、少なくとも相手を説得する能力があるということ。このため営業に配属されたら最初の5―10年は今まで同様、全力投球しなさいと言っている。いきなり経営人材になれるわけではなく、一定の我慢は必要だ。その上でなるべく早く別の経験が積めるようにする」

 ―今後、大型の新規投資をする上でポイントとなるところは。
 「全く新しいところでは中計にも書いてある通り、デジタル化の部分。電力も小売りも融合されて、自動車もいろいろな面でデジタル化とつながってくる。Eコマースでは通信、携帯、物流とつながってくる。ただしプラットフォーマーがグローバルに席巻するということにはならないと思う。規制の問題もあり、それぞれの国、地域が自前のものをつくっていくのではないかと見ている」

【記者の目】
 インタビュー中に何度も出てきた言葉が「縦の壁を取り払う」ことと、「融合」。この二つが新中計のキーワードになることは間違いない。加えて若手人材が投資先のスタートアップや国内外のグループ企業で活躍できる受け皿作りだ。ただし、ある程度の実業経験を積む“我慢”の期間は一定期間必要だと説く。
(文=宮里秀司)
                      

日刊工業新聞2018年12月18日

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