総合化学メーカーが向き合う、“技術革新”という苦難の道

新規事業の創出は果たせるのか

 総合化学各社にとって2019年のキーワードはイノベーション(技術革新)だ。新たな中期経営計画を始動させる会社も多く、積年の課題である新規事業の創出は待ったなしだ。ここ2―3年の石油化学市況高で得た稼ぎを研究開発へ振り向けて、人工知能(AI)などデジタル技術導入を含めて技術革新を加速する基盤づくりを急がなければならない。

持続的な成長


 住友化学や旭化成、東ソー、宇部興産は現在、19―21年度の次期中期経営計画を練っているところ。石化市況の追い風を強く受けた現中計は恵まれた3年間であり、実力以上の好業績を打ち出した側面は否めない。兜(かぶと)の緒を締めて、持続的な成長を目指すイノベーション基盤づくりが重要課題となる。

 住友化学の十倉雅和社長は「次世代事業の加速を次の中計で一段と取り組まないといけない。イノベーションを加速するシステムを導入しようと検討している」と次期中計の骨子を明かす。自前主義にこだわらず、大学やベンチャー企業と連携を深めるオープンイノベーションをさらに重視する考えだ。

変革を急ぐ


 旭化成の小堀秀毅社長も「事業にはサイクルがあるので、いま調子良いものが25年にも良いとは限らない。ポートフォリオの変換を常に意識して、その時その時で成長のエンジンをいくつ持っていられるかが大事だ」と新規事業創出の必要性を訴える。

 現中計で掲げた「コネクト」を旗印に今後も社内外との交流・結束を強めて、自らの変化に必要な技術や市場を積極的に取り込んでいく考えだ。

 東ソーの山本寿宣社長は「MI(マテリアルズ・インフォマティクス)に一生懸命取り組んでいる。新しい材料の研究で解を早く出して短縮化を図る。人手不足も深刻で簡単に要員を増やせないので、こうでもしないと対処できない」とデジタル変革を急ぐ。

苦難の道


 宇部興産の山本謙社長は「化学事業を成長の柱に今後も据えて、現中計でつくった土台の上にもう一段上を見ていく」と次期中期の方向性を示す。

 20世紀は素材の時代とされ、広く普及しているポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンなどが次々と工業化された。一方、21世紀になると革新的な素材は生まれにくくなり、総合化学各社の研究開発も苦難の道に入り込んだ。

 現在はデジタル技術で効率化するとともに、社会課題の解決に貢献するソリューション開発への移行を目指している。19年は新たな時代の幕開けとなるか。
(文=鈴木岳志)

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日刊工業新聞2019年1月1日

  

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