ファーウェイ排除で抱える日本のジレンマ、米中ハイテク対立は不可逆的に

 “米中ハイテク戦争”をめぐり、日本政府が難しい対応を迫られている。米国が中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)製品や同社製部品を組み込んだ製品を政府調達などから排除する強硬策を講じる。これに関連し、日本政府は10日開いたサイバーセキュリティ対策推進会議で、各府省庁で使用する情報通信機器に「悪意ある機能」が組み込まれた機器は調達しないことを申し合わせ、米国と歩調を合わせた。日中関係も改善したい日本政府にとって半ばジレンマの状況にある。

 政府のサイバーセキュリティ対策推進会議は名指しこそ避けたが、中国のファーウェイと中興通訊(ZTE)を政府調達から排除することを念頭に置く。

 米国は8月に成立した国防権限法に基づき、米政府や米政府機関によるファーウェイ製品などの調達を禁止している。中国が産業政策「中国製造2025」により次世代通信規格「5G」の整備事業で覇権を握り、軍事・安全保障で米国の脅威となることをトランプ政権は強く警戒する。

 1日の米中首脳会談では、米国による対中関税制裁を90日間講じない“休戦”を決めた裏側で、イランへの違法な製品輸出を理由にファーウェイ最高幹部の逮捕劇を仕掛けるなど米国の対中圧力は全く弱まっていない。

 中国政府は一連の中国機器排除を「重大な懸念」だと表明し、ファーウェイ最高幹部の逮捕状を撤回するよう米国の駐中国大使に求めるなど、米中関係は新たな局面を迎えた。

 日本は2019年に主要20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国。だが米中摩擦の本質が通商問題というより軍事・安全保障問題にある以上、日本に両国交渉の調整役は務まらない。それどころか日本にとって2大輸出相手国である米中の衝突と19年度に控える消費増税が日本経済に及ぼす影響が懸念される。

 渦中の米中経済の先行きも楽観できない。7―9月期に年率6・5%の実質成長率だった中国は10―12月にさらに成長が減速するとの民間予測が多いほか、米国も20年の利上げ打ち止めを視野に入れる。

 米中ハイテク戦争に着地点は見えず、世界経済の先行きに暗雲が漂い始めている。

幹部逮捕の報復合戦も


●第一生命経済研究所・主席エコノミスト・西浜徹氏
ファーウェイ最高幹部の逮捕は、中国にとってZTEへの制裁とは格の違う大きな痛手だ。報復として今後、中国に進出している米国企業の幹部を逮捕するため、米国企業の何らかの“あら探し”をされることが予想される。ハイテク関連での米中対立は不可逆的に進むだろう。

90日の猶予を設けた米中協議も先行きは不透明で楽観視はできない。米中対立の悪影響は中国のアジアからの輸入の減少などサプライチェーンの川上にも出始めている。(談)

「中国製造2025」達成困難


●みずほ総合研究所・主任エコノミスト・大和香織氏
 今後も中国のハイテク中核企業が狙われるようなことがあれば、政府が掲げる「中国製造2025」達成も困難になりかねない。ハイテク関連での米国の対中圧力が長期化すれば、半導体などサプライチェーンの中核である中国の生産拠点が見直される可能性もあり、中国経済の減速の要因にもなりうる。

米中協議も残り3カ月でまとまるとは思えない。貿易不均衡は是正できるだろうが、他分野でどういう合意があり得るのかまだ見えてこない。(談)

日刊工業新聞2018年12月11日

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。