課題噴出の工作機械、「空前の活況」は折れずに全速前進できるか

 工作機械業界はまれにみる慌ただしい1年だった。2018年受注高が過去最高の2兆円に迫る空前の活況に沸いた。一方で、活況に伴う部品・人手不足、米中貿易摩擦に起因する生産体制の見直しや中国市場の減速、中国による不当廉売調査と早急に策を講じるべき課題も噴出した。

技術面では、世界的な人手不足を要因に工程集約、自動化が進み、デジタル化、積層造形(AM)の多様化のほか、人工知能(AI)スピーカーといった機械業界の延長線上にはない技術の芽生えもあった。社会が新しい時代に移り行く姿を如実に表した年だ。

年ごとの需要変動幅が大きい工作機械業界は、ムダをなくし、企業体質を絞りきったリーンな生産体制を持つ。月間受注高1000億円が好不調の分かれ目と言われる業界にあって、今年のように目安を5割も超える月が続けば供給面で支障が出てくる。

「受注の伸びに部品供給が追い付かない」(飯村幸生日本工作機械工業会会長)状況で、要素部品の納期が延びに延びた。愛知県の自動車部品大手の社長は「自社で部品を大量に買い、さらに他の機械から必要な機械に部品を付け替えている」と自衛した。空前の活況により、サプライチェーンに改善の余地があることを再認識することになった。現状、部品各社の懸命の取り組みや中国市場の落ち着きにより、部品不足はおおむね収束しているようだ。

世界で保護主義が一段と強まったのも今年だ。米中貿易摩擦が勃発し、青天井で伸びていた受注が陰り始めた。米国が中国製品に制裁関税措置を発動し、三菱電機などが工作機械などの機械を中国から日本などに移管する事態に発展した。

80年代のレーガン米政権時代、日米貿易摩擦の中で日本の工作機械産業は輸出の自主規制をのまされた。それでも折れず、足かせをはめたまま世界最高峰の産業へと突き進んだ。今は似通ったきな臭さがある。大変革の時代に突入した覚悟と長期的視野で、当時と同じように全速で前進する必要がある。
(文・六笠友和)

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