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半導体市場の今後は?富士フイルムが100億円の生産投資

 富士フイルムは13日、半導体材料事業の米国拠点に今後3年間で約100億円を投資すると発表した。アリゾナ州とロードアイランド州の2工場で、最先端半導体材料の開発や生産、品質保証などの設備を増強する。人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)、自動運転技術の進展や、第5世代通信(5G)の普及などで、半導体の需要拡大や高性能化が見込まれる。高性能、高品質な半導体材料を安定的に供給できる体制を整える。

 アリゾナ州の工場(写真)では、CMPスラリー(研磨材)や高純度溶剤の開発強化に向け、新棟を建設する。新棟にはクリーンルームや最新鋭の検査装置を設け、開発のスピードアップや品質保証体制の拡充を進める。CMPスラリーの増産に向けた設備投資も進める。

 ロードアイランド州の工場には微細化に対応できるパターニングプロセスである、ネガティブトーンイメージング用現像液の生産設備を増強。高純度化へのニーズに対応する。

 富士フイルムは、日本や米国、台湾、韓国、ベルギーなどに半導体材料の研究開発や生産、販売の拠点を設置。16年には台湾で先端半導体材料の新工場を稼働するなど、現地生産や顧客サポートの体制を拡充している。

最先端にこだわり、成長してきた半導体材料


(日刊工業新聞2016年11月11日掲載、内容・肩書きは当時のもの)

 「10年位前は、営業先で『なぜ富士フイルムさんが?』とけげんな顔をされた」。取締役常務執行役員エレクトロニクスマテリアルズ事業部長の御林慶司は、半導体業界で知名度が低かった当時をこう振り返る。フォトレジストなどのプロセス材料を手がける半導体材料事業は、2009年度から足元まで年率2ケタ成長を堅持。最先端にこだわる姿勢を貫き、16年度には売上高を09年度比約3倍にする目標も掲げる。

 御林がターゲットに位置付けるのは「高度な技術による付加価値が評価される領域」。技術力に絶対の自信を持つから、価格競争が起こる成熟した分野には手を出さない。ここ数年はスマートフォンの大画面・薄型化や高精細カメラの搭載といった波に乗り、主力のフォトレジストやCMPスラリー(研磨材)は年率20―30%で伸長。「社内での存在感も一気に高まった」と胸を張る。

 ただ、今後はスマホに続く強力なけん引役の不在も指摘される。そこで御林がよりどころとするのが、次なる技術や製品を敏感に嗅ぎ分けていく力だ。例えば、ある携帯電話が世界的なヒットに沸いても、使われる半導体材料の参入障壁が低ければうまみはない。逆に参入障壁は高くても、最終製品が不発なら成長は遠のく。難しい局面のはずだが、御林は「今までも難しかったから」と笑う。

 その背景には、同社が着々と打ってきた最先端への布石がある。静岡事業所(静岡県吉田町)で5月に稼働したクリーンルームはその一例。フッ化アルゴン(ArF)液浸装置に向けたフォトレジストや周辺材料の開発と検査・評価を支える。TSMCなど半導体ファウンドリー(受託製造企業)が集まる台湾にも、現像液やCMPスラリーを生産する新工場が完成。11月中にも稼働する見通しだ。

 ベルギーの研究機関IMECを活用し、品質管理・保証の向上にも力を注ぐ。最近はCMPスラリーや高純度溶剤に強い海外メーカーのM&A(合併・買収)でも存在感を発揮した。「技術改良による“次”も大切だが、大きな飛躍も考えていく」ともう一段上を志向する。(敬称略)
日刊工業新聞2018年12月14日
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
富士フイルムが得意とするCMPスラリーは、半導体の基板表面を平滑にする材料。より回路の線幅の狭い最先端の半導体を生産するには、より表面をツルツルに研磨できる高機能な材料が求められます。富士フイルムは以前から継続的に投資をしています。スマホ市場の動向は気になりますが、富士フイルムは高い値段の取れる付加価値の高い領域に力を入れているため、他の材料メーカーに比べ市場変動だけに影響を受けにくいと予想されます。

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