医療診断支援AI、主導権狙う富士フイルム

画像システムを19年度にも実用化

 富士フイルムは、病院内にある医療用画像管理システム(PACS)に搭載する人工知能(AI)プラットフォーム(基盤)の開発を急ぐ。教師データ付き放射線画像を基盤に学習させて分析することで臓器の領域を正確に認識したり、病変を検出して見落としを防いだり、医師の診断支援に役立てる。さらにAIによる抽出結果のリポート作成を半自動化し、ワークフローの短縮につなげる。2018年度中に薬事申請し、19年度にも実用化を目指す。

 富士フイルムのPACS導入数は世界シェアトップクラス。これをベースにAI基盤を提供して“次世代PACS”を作り込むのが戦略の柱となる。自前の技術だけではなく、ベンチャーと連携し、アプリケーション(応用ソフト)も搭載する。

 基盤は三つのAI技術を軸に構成する。一つは臓器の把握で、人体の地図を詳細に作り込む技術。もう一つが疾患箇所を見つける技術だ。これらの技術を実現するには良質な教師データが欠かせない。そのため、同社は拠点病院と連携し、PACSに蓄積した膨大なデータを基に臓器の位置や大きさ、病変のデータを教え込ませ、精度の高いアルゴリズムを開発する。

 さらに、医師の業務の中で最も時間を要するリポート作成を効率化する。例えば、病変部をクリックすると、過去に似たような疾患があれば自動でリポートを下書きする。医師は必要に応じて修正し、診断支援を含め最終的な判断は医師が行う。

 開発はディープラーニング(深層学習)を使ったアルゴリズムを基盤とするが、学習させるのは同社の開発現場であり、医療現場では学習させない。性能が進化して変わってしまうのを防ぐためで、現行のガイドラインで対応できる。PACSやX線装置などの自社製品にAIを取り入れることで「既存事業の底上げを図る」(メディカルシステム事業部の鍋田敏之IT事業長)考えだ。

 AIの診断支援をめぐっては日立製作所やキヤノンメディカルシステムズ(栃木県大田原市)などメーカー各社が製品開発を加速している。18年度中には数社が薬事申請するとされ、医療現場におけるAIの活用も具体化のステージへと移る。
(文=清水耕一郎)

日刊工業新聞2018年12月4日

  

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