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日本発のスタートアップ企業は少ない・・・起業を目指す若者に伝えたい2つのこと

アステリア社長・平野洋一郎氏
**「外へ出る」若者に投資を
 イノベーションの創出が国策として脚光を浴びる時代となってきたが、日本はその源泉となるスタートアップ企業の数が圧倒的に少ない。「スタートアップは日本全体を変える原動力だ」という意識を広く社会に浸透させることが大切だ。

好例シンガポール


 私は2014年から3年半にわたりシンガポールに駐在し、経営トップとして東南アジアでの事業開拓に奔走した。そこで見た景色は日本とは異なり、若い人が新しいアイデアを考え、スタートアップを始めることがごく自然な姿だった。税制優遇をはじめ国の政策もあり、近隣諸国や欧米からも投資資金が流れ込み、好循環を生み出していた。

 そこを踏まえて必要性を痛感しているのは、スタートアップを投資でやるのか、融資でやるのかという視点だ。起業したのは20年前。当時から「投資モデルを日本に持ち込みたい」という思いがあった。

 融資モデルは失敗すると返済に時間がかかり、再び立ち上がれないことすらある。投資ならば計画通りにいかなくても、次の日から新しいアイデアでやり直せる。実際に、当時、外資系に勤めていた友人は、倒産したにもかかわらず、同じ投資家から次の資金を得て成功していた。

 日本社会ではリスクは良くないことという風潮があり、リスクをゼロにしたがる。そうではなく、リスクは適切に管理するものだ。98年創業の当社が黒字転換したのは05年。その間は投資家からの出資で開発を続けてきた。07年のマザーズ上場まで銀行の門をたたいていない。

「たい」発想で行動


 18年に東証1部上場へとくら替えとなり、新たな視界が開けた。ここに至る道は平たんではなく、一生懸命もがいてきた結果だ。この経験を通して、起業を目指す若者に二つのことを伝えたい。一つは外に出ること。外とは海外に限らず、自分の考え方や組織の外という意味もある。自分がいる場所から外に出て、刺激を得ることで新しい考えや手法が身につく。

 もう一つは物事を考える際に「…べき」を減らし、「…たい」を増やすこと。日本人は「べき論」が大好きだが、誰かが引いた線に合わせることでしかない。“たい”は、べき論を超えた、もう一段高い目標。だからこそ他とは違う価値がある。毎日の行動の中で5割以上は“べき”ではなく、“たい”を続けることでスタートアップにたどり着く人が増えるはずだ。
【略歴】ひらの・よういちろう 83年(昭58)熊本大工学部中退し、地元(熊本県)企業でソフトウエア開発に従事。87年ロータス、98年にインフォテリア(現アステリア)を創業。熊本県出身、55歳。

アステリア社長・平野洋一郎氏
日刊工業新聞2018年11月26日

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