地味な「東芝Nextプラン」、市場は案外評価?

現実的な目標が目立つも、コスト圧縮だけでは…

 東芝が8日発表した構造改革案「東芝Nextプラン」は大なたを振るう改革色の濃い計画でなく、実効性を重視した内容になった。華やかさはないものの、最大のリスクとみられていた液化天然ガス(LNG)事業の損失を計上するなど経営再建に向けて大きく前進した形だ。ただ2024年3月期目標は営業利益率8%以上(19年3月期見通し1・7%)と高く、実現への道のりは平たんではない。

 改革案の骨子は5年で人員削減7000人、設備投資・研究開発投資に計1兆7000億円。人員削減と調達などの見直しで2000億円規模のコストを圧縮する。

 大きな数字が踊るが、人員削減は自然減が中心で、投資額も年次ベースでみると19年3月期から微増程度。投資の方針も再生可能エネルギー、パワー半導体、リチウムイオン電池など、これまで公表されていた内容との重複が多い。

 改革に一気にかじを切ると言うよりは足元の延長線の計画と言える。車谷暢昭会長兼最高経営責任者(CEO)は「大規模なM&A(合併・買収)にキャッシュを使う予定はない」とも語る。

 「地味」な戦略にも映るが市場は現実的な計画と判断してか、株式市場は反応。8日の終値は前日から1割以上、上昇した。

 これまでの東芝の事業計画と大きく異なるのはボトムアップで策定し、計画の実現性を重視したところ。9月末までに各事業会社が練り上げ、その後、本体と細部を詰めた。
「本社からの『宿題』はほとんどなかった」(事業会社幹部)との声もあり、現場重視の姿勢がうかがえる。

 東芝関係者は「決めたことをやりきることを重視する姿勢のあらわれ」と語る。象徴的なのがLNG事業の売却交渉。関係者によると当初は11月半ばまでの合意、年内譲渡を目指していたが「かなり厳しいスケジュール」(金融機関幹部)との見方が支配的だった。譲渡完了は当初の想定よりは遅れるものの、中国企業への売却を決めた。

 車谷会長は英原発子会社の清算とLNGからの撤退で「事業リスクへの対応はおおむね完了した」と胸を張る。ただ「グローバルでもトップレベルの水準」と指摘するように、24年3月期の営業利益率8%以上の達成は容易でない。コスト圧縮だけでは実現は難しい現実が横たわる。

 構造改革案は現実的な目標値が目立つが、個別の事業では、赤字のシステムLSI事業や火力発電事業を21年3月期に営業利益率5%以上を目指すなど高い目標も設けている。

 かつて営業利益の9割を稼ぎ出した半導体メモリーの穴を埋める事業はすぐには生まれない。一つ一つのハードルを越えていくことが再生への道のりになる。
          

(文=栗下直也)

日刊工業新聞2018年11月9日

  

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