空前の採用難、総合商社並みの給与水準や新社員寮

待遇改善に工夫

 2019年春採用に向け就職活動の面接などの選考が1日に本格的に解禁された。売り手市場が続く中、従業員300人未満の企業では求人倍率が10倍近く、空前の採用難となっている。大手企業のみならず、中堅・中小企業でも人材確保に待遇の改善など工夫を凝らす動きが目立つ。

 機械商社大手の山善は18年4月入社の新入社員から、大卒総合職の月額給与を21万2000円から24万円引き上げた。「ベンチマークとしていた総合商社並みの水準」(尾崎良寛広報・IR室長)という。

 トヨタ自動車は数十億円以上を投じ、本社近くの平山地区にある社員寮を19年1月の完成予定で建て替えている。老朽化に伴う措置ではあるが、建て替えを機に規模や設備を充実させ、福利厚生の向上につなげる。

 仕事と家庭などを調和させる「ワークライフバランス」を制度として強化する動きも見られる。

 クボタの佐々木博明広報室長は「17年度の有給休暇取得実績は約90%。有休の完全取得推進をアピールしている」と語る。有休制度も1日や半日単位から時間単位へ変更した。

 日本電産は4月に「配偶者転勤休職制度」を導入した。配偶者の転勤(国内外)に同行して就業が難しくなった際、最大3年間の休職を認める。共働き世帯の増加など、社員の生活様式の多様化に対応する。

 金融業界でも、地方銀行の間で結婚や介護などで転居するため退職せざるを得ない行員を転居先の銀行に紹介する取り組みが広がっている。

 また日本人学生のみならず、外国人の採用も大手間では奪い合いになっている。幅広い学生を呼び込める土壌を整えており、ヤンマーではイスラム教の戒律に沿った「ハラール」への対応を進める。

 「本社の社員食堂はハラール対応食を提供するほか、祈祷(きとう)室も用意」(ブランドコミュニケーション部広報グループ)している。

中小企業への就職希望者は求人数のわずか10分の1


 新入社員ならば誰もが抱く理想と現実のミスマッチは中堅・中小企業にとっては致命的になりかねない。

 リクルートワークス研究所の調べでは、従業員300人未満の企業では希望者数が求人数を下回る状況が続く。19年卒の求人数46万2900人に対し、希望者数は約1割の4万6700人にとどまる。いかに学生を確保し継続して働ける環境をつくるか、大手以上に頭を悩ましている。

 「このところ技術系新卒に関し退社はゼロ」。東洋技研(長野県岡谷市)の花岡孝社長は胸を張る。工業用端子台製造が主力の同社では、就職試験前の段階で技術系学生に対して全工程を案内する。

 プレス、組み立て、自動化装置製造などの現場を見せながら、先輩社員が面白みをじっくり説明。事前すり合わせを徹底し、入社後は希望部署に配置する。

 「就業規則で縛ると優秀な人材を確保できない」と語るのはICST(さいたま市中央区)の横井博之社長。医療機器の3国間貿易などを手がける同社では4月に在宅・時短勤務を導入。従業員の1人は在宅と時短を併用し、出社するのは月に5回だ。

 国内の少子高齢化が進む中、中堅・中小にとっても海外人材の活用は不可避だ。

 「国内で溶接技能者を募集しても今は集まらない」。プレファブ鋼管の製造が主力の多久製作所(大阪市中央区)の奥田信夫社長は採用の難しさを訴える。溶接技能者を安定確保するため、ベトナムの職業訓練校とパートナーシップ契約を結んだ。

 砂型鋳造を手がける東亜成型(大阪市西淀川区)は会員制交流サイト(SNS)を積極的に活用する。ベトナム人の社員がフェイスブックで情報を発信。社名が知られるようになり、同社として2人目のベトナム人社員が入社した。浦竹重行社長は「社員募集というだけでなく、楽しくやりがいがあると伝えることが大切」と話す。
 

日刊工業新聞2018年6月1日

明 豊

明 豊
06月03日
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新聞社もブランドや給与だけで人が採れなくなってきています。

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