富士通が挑む新ビジネス、舞台は百貨店

三越伊勢丹と共創プロジェクトに着手

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銀座三越3階の売り場では11月まで実証実験を展開中。QRコードをスマホアプリで読み取っている
**三越伊勢丹とまずドレスで
 富士通は、三越伊勢丹との共創プロジェクトとして、実店舗での強みを生かした新しいビジネスモデルの構築に乗り出している。まずはパーティードレスのレンタルサービスに焦点を当て、8月から銀座三越店(東京都中央区)で実証実験を開始。互いにリスクを分担し、協力して生み出される利益を分け合うレベニューシェアをテコに、店舗販売に革新をもたらす考えだ。

購買行動の変化


 ネット通販の普及で生活者の購買行動が大きく変化する中で、「商品を店舗で確認し、後でネットで購入する」といったスタイルが若者中心に定着しつつある。

 これに対して、百貨店をはじめ流通業界では、実店舗と電子商取引(EC)サイトを融合させ、一貫した顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を提供する「オムニチャネル」の対応などに力を注いでいる。

二つの工夫


 富士通と三越伊勢丹の共創プロジェクトでは、新しい購買行動として台頭するシェアリング事業を視野に、先駆モデルとしてパーティードレスのレンタルサービスに着目した。

 実証実験は8―11月末まで4カ月間。日本ではパーティー文化は根付いてはいないが、友人の結婚式などへの出席機会が増える20―30代の女性を対象に、スマートフォンを通じて実店舗とECをシームレスにつなぎ、購買・シェアリングの選択肢を消費者に提供するシステムを構築した。

 売り場でドレスを選ぶ際には「多くの人はスマホで写真を撮り、後で友人に相談したり、別の店舗に見に行ったりして、悩んでから決める」(富士通共創イノベーション事業部の松苗隼平氏)。しかし結果として、ドレスとの出会いが実店舗であっても、購買はアマゾンなどのECサイトへ流れてしまうことが少なくない。

 そこで実証実験では、購買のチャンスを逃さないように、二つの工夫をした。

 一つはスマホの専用アプリケーション(応用ソフト)の活用。実店舗で試着した服にはQRコードが付いていて、これをスマホアプリで読み取ると、気に入った服の商品情報をアプリ内にためられる。「クリックして即決してもよいし、自宅に戻ってから、注文してキャッシュレスで決済することが可能」(松苗氏)。アプリ上ではECサイトのように多様な商品情報も閲覧できる。

 もう一つは販売員とのつながり。スマホアプリを通して、店頭で知り合った販売員と友達になれ、チャットでコーディネートを相談できる。

銀座店で実証


 共創に当たり、システムの開発とサポートは富士通が負担し、購買機能やチャットの強化にも取り組んでいる。三越伊勢丹は実証実験の場として、一等地の銀座の売り場を提供。さらに、通常行っている資産を持たない消化仕入れではなく、レンタル分の服を買い取るなど、リスクを分け合って実験に参加した。目指すは実店舗や対面接客の強みを生かした新たな顧客体験だ。
(文=編集委員・斎藤実)
「CEATEC」でもドレスのレンタルサービスを展示(富士通のブース)

日刊工業新聞2018年11月2日

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