福岡県が“工芸EXPO”で発信する新感覚の伝統工芸

クリエイターや若者の視点を積極的に取りこむ狙いとは

 福岡県が伝統工芸振興の大きな契機として期待する「KOUGEI EXPO(第35回伝統的工芸品月間国民会議全国大会福岡大会)」が11月2―4日に福岡市内で開かれる。大会に合わせて県も「見て、触って、作って、魅力を直接感じていただく」(小川洋知事)と意気込み、独自の事業を展開する。伝統に新しい風を吹き込み、受け継がれてきた技術が活躍を広げようとしている。

BツーB意識、感性磨く


 大会は経済産業省などが主催する。福岡開催は30年ぶり。メイン会場のマリンメッセ福岡(福岡市博多区)では、全国の工芸品が紹介され、販売や実演、製作体験もある。県は国指定の県内7品目を中心に知事指定の工芸品34品目もPRする。

 伝統を現代に生かすための方策を探り、提案するため県が実施するのが共同企画。国指定の博多織、博多人形、久留米絣(がすり)、小石原焼、八女福島仏壇、上野焼、八女提灯(ちょうちん)が、国内外で活躍するクリエーターや県内の大学生と組んだ。若手職人によるカフェでは、店員が身に付ける物や使われる食器に、さりげなく伝統工芸が取り入れられる。

 クリエーターとの企画では、博多織の生地はヘルメットバッグやショルダーバッグに使われ、久留米絣ではシャツやサッカーボール、スマートフォンケースを製作した。八女福島仏壇の技術はアクセサリーに生かされた。フラワーアーティストが生花で飾った博多人形や墨絵アーティストの作品を使用した八女提灯は伝統工芸の新たな見せ方を示す。

 大学との連携で参加したのは九州産業大、福岡大、久留米工業大、近畿大、久留米大の5大学。約1年前から話し合いや勉強会を実施して産地の魅力発信に関しても取り組んできた。

 共同企画は製作だけでなく、伝統工芸にクリエーターや若者の視点や感覚を取り入れることにも意義がある。県は消費者など外部の声を、生産側に届ける事業を大会前から進めてきた。近年は東京都内のインテリアショップやセレクトショップとの企画のほか、都内や米国ニューヨークでのテスト販売などを実施している。

 全国の伝統工芸には時代の変化に対応した新たな製品で、現代に受け入れられている製品もある。異文化交流と言える共同企画が、そのような製品作りにつながる刺激や経験になることも期待される。

 福岡県は地元の伝統工芸がBツーC(対消費者)だけでなく、BツーB(企業間)取引も拡大できると考え、共同企画でも意識している。県の担当者は素材としても有望であるだけでなく「技術を売ることを考えてもいい」と話す。

博多織や久留米絣はメーカーとの共同企画製品の実績があり、他の伝統工芸でも意欲を示す職人がいる。今回の企画では、クギを使わず木材を組み立てる八女福島仏壇の技術に近畿大が注目して共同で組子キットなどを製作した。そのことは伝統工芸の中に新たな事業化のシーズがある可能性を示している。
(文=西部・関広樹)

日刊工業新聞2018年10月31日

  

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