IT勢力図に地殻変動か…IBMがレッドハット買収の衝撃
買収額は約3兆7000億円
IT業界に激震走る―。米IBMがオープンソースソフト(OSS)の老舗である米レッドハットを買収する。買収額は334億ドル(約3兆7000億円)とケタ違いに大きく、IBMにとっても過去最大。レッドハットが提供するOSS製品は特定ベンダーに依存しないオープンな開発コミュニティー活動に基づき、ここ数年はクラウド市場での存在感を増していた。レッドハットを傘下に収めることで、IBMはOSSを起点とするイノベーションの発信源を丸ごとのみ込む。
レッドハットは基本ソフト(OS)「リナックス」の供給元として知られ、主要な日系ITベンダーともパートナー関係にある。クラウド市場に向けてはコンテナと呼ぶ仮想化技術に対応したOSS群「オープンシフト」を戦略商品として掲げる。オープンシフトは企業向けプライベート(社内)クラウドで勢力を広げており、IBMにとっては競合製品となり得る。レッドハットを傘下に収めることで、そこにくさびを打ち込むとともに、IBMが注力するマルチクラウド戦略を加速する。2019年中の買収完了を見込む。
今回の買収がもたらす影響として、IT業界の勢力地図に地殻変動を巻き起こす公算も大きい。IBMは20年以上にわたってOSSの活動に関わり、現在、6万5000人のオープンソースの技術者を抱えている。OSSの活動は開発者同士が組織の枠を超えて尊重し合うオープンな関係が前提となる。IBMはこうしたOSSの流儀に沿う方針だが、一方で今回の買収をどう生かすかも見どころ。
OSSベンダーの大型買収では、直近では米マイクロソフト(MS)による米ギットハブの買収が記憶に新しい。ギットハブはプログラムをウエブ上で公開する共有サービスを展開し、ユーザー数は全世界で2800万人を超える。MSはギットハブの買収後も活動をそのまま継続する意向であり、オープンソースの開発者からの支持を得ている。
MSはギットハブの買収に75億ドル(約8300億円)を投じたが、今回はその4・5倍。IBMは攻防の一手として、その価値を見いだした格好だ。
(文=斉藤実)
レッドハットは基本ソフト(OS)「リナックス」の供給元として知られ、主要な日系ITベンダーともパートナー関係にある。クラウド市場に向けてはコンテナと呼ぶ仮想化技術に対応したOSS群「オープンシフト」を戦略商品として掲げる。オープンシフトは企業向けプライベート(社内)クラウドで勢力を広げており、IBMにとっては競合製品となり得る。レッドハットを傘下に収めることで、そこにくさびを打ち込むとともに、IBMが注力するマルチクラウド戦略を加速する。2019年中の買収完了を見込む。
今回の買収がもたらす影響として、IT業界の勢力地図に地殻変動を巻き起こす公算も大きい。IBMは20年以上にわたってOSSの活動に関わり、現在、6万5000人のオープンソースの技術者を抱えている。OSSの活動は開発者同士が組織の枠を超えて尊重し合うオープンな関係が前提となる。IBMはこうしたOSSの流儀に沿う方針だが、一方で今回の買収をどう生かすかも見どころ。
OSSベンダーの大型買収では、直近では米マイクロソフト(MS)による米ギットハブの買収が記憶に新しい。ギットハブはプログラムをウエブ上で公開する共有サービスを展開し、ユーザー数は全世界で2800万人を超える。MSはギットハブの買収後も活動をそのまま継続する意向であり、オープンソースの開発者からの支持を得ている。
MSはギットハブの買収に75億ドル(約8300億円)を投じたが、今回はその4・5倍。IBMは攻防の一手として、その価値を見いだした格好だ。
(文=斉藤実)
日刊工業新聞2018年10月30日