キヤノン幹部が語る新ミラーレス「将来の可能性を秘めたカメラ」

キヤノン執行役員・戸倉剛氏 インタビュー

 キヤノンはイメージセンサーがフルサイズとなる高級ミラーレスカメラ「EOS R」を25日に発売する。マウント(本体とレンズの結合部分)を刷新したRシリーズは将来のカメラを見据え、多くの最新技術を盛り込んだ。今秋はパナソニックやニコン、富士フイルムなど競合他社も相次ぎ新モデルを発表している。競争環境の激化が予想される中、戸倉剛執行役員に今後の戦略を聞いた。

 ―「EOS R」を投入する狙いは。
 「過去のEOSシステムの開発から既に30年が経過し、その間にデバイスや市場環境も大きく変わった。こうした中で将来を見据えた変化が必要な時期にきていた。フルサイズミラーレスという点に焦点が当たりがちだが、Rシリーズはあくまで将来の新たな可能性を秘めたカメラであり、その中でミラーレス構造が必要だったということだ」

 ―新マウントの採用やバックフォーカス(レンズと撮像面の距離)の短縮化などを進めました。
 「例えばレンズでみると、設計条件の制約を一歩、外に広げることができた。設計の自由度が高まることで、今後は従来と異なる面白いレンズが作れるようになる。開発チームのモチベーションも非常に高い。レンズ展開の詳細はまだ言えないが、年に複数本は準備していきたい」

 「(カメラとレンズをつなぐ)マウント通信システムも工夫を重ねた。将来を見据えれば今後、カメラの形状だけでなく、機能も大きく変化する可能性がある。起こり得る将来を想像し、どのような変化が起きてもそれに耐えられるインターフェースを築いたことも大きい」

 ―生産技術も従来以上に工夫が必要になります。
 「特にレンズは設計の自由度が広がった分、生産技術も難しくなる。Rシリーズのレンズには多様な硝材やコーティング技術を盛り込んでいる。レンズを高精度に生産するには今後、内製化の方向が強くなると思う。また、ここ数年はレンズのラインアップを充実させたいので、ある程度の(生産設備関連の)投資も確保している」

 ―ミラーレス市場は競合製品が増えてきました。今後の市場環境をどう見ていますか。
 「各社が次々と新製品を発表してきたことで、ミラーレスが注目されることになった。市場拡大の期待もあり、関心が高まることは業界としてはいいことだと思う。これから切磋琢磨(せっさたくま)することになるが、負けるわけにはいかない。シェア1位を狙う」

キヤノン執行役員・戸倉剛氏


【記者の目/社運かけた戦略商品】
 将来、どのような環境変化にも耐え得るカメラとは何か。その答えとして、キヤノンはフルサイズ型ミラーレスを投入する。市場全体が縮小傾向にある中、キヤノンといえども将来もその地位が維持できる保証はない。一眼レフカメラとの需要の取り合いを覚悟してでも開発した「EOS R」。同社のカメラ事業の行く末を占う、まさに社運をかけた戦略商品となる。(杉浦武士)

日刊工業新聞 2018年10月25日

梶原 洵子

梶原 洵子
10月26日
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キヤノンはミラーレスカメラでは後発組でしたが、「EOS Kiss」シリーズからミラーレスを発売するなどで、大幅に販売を伸ばしています。

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